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『いただき!ガルグ=マクめし』感想

 追憶@reminder_89です。昨年末、人生で初めて同人誌を購入しました。『いただき!ガルグ=マクめし』という『ファイアーエムブレム 風花雪月』の作中料理について考察された本です。なんと全250ページ、厚さ約1.6cmもの大ボリュームのため、少しずつ読み進めたら読了に1ヶ月かかりました。すごい情報量の本で知的好奇心が大いに満たされたので感想まとめました。

どんな本?

 『湖底より愛とかこめて』というブログにて照二朗氏が執筆した「FE風花雪月と中世の食」記事シリーズが発端です。

 ガルグ=マク大修道院食堂の食事メニューについて、登場人物ごとの好き嫌いを時代背景や産業構造さらには一人一人の生い立ちまで分析してフォドラの食文化を紐解いていく考察記事で、歴史や地理が好きなら間違いなくお勧めできます。2021年1月現在、⑦まで記事になっておりローレンツとフェルディナント、ドロテアとアッシュ、レオニーとラファエル、アネットとメルセデス、イグナーツとシャミア、シルヴァンとイングリットについてはブログでおおむね近い内容が読めます。

 それを主人公除くプレイアブルキャラ全員(38人!)まとめたうえで個別の料理についても考察し尽くしたものが『いただき!ガルグ=マクめし』です。「FE風花雪月と中世の食」シリーズを読んで気に入った方はぜひ!

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いただき!ガルグ=マクめしが買えるって
話だぜ (ダイマ)

感想

 一言でいうとぶ厚い学術書です。よくまとめきったなぁ、と。立派な研究ですよこれは。FE風花雪月の開発チームもまさかここまで食の好みを分析されると思ってなかったのでは。もし自分が制作者だったら、込められた愛と熱量に感激して泣き出すレベルだと思います。
 食の好みで興味深い内容だったものをいくつか。エーデルガルトが貴族らしくない料理である「フィッシュサンド」を好む理由が面白かったですね。現実のサンドイッチは近世になって生まれた料理で効率重視・合理的なエーデルガルトの革命志向を見事に表現してるとわかり感心しました。黒鷲の学級は他にカスパルやリンハルトが食の好みがはっきり分かれるわかりやすい例として書かれていて「嫌いなものを嫌いだと避けられる」アドラステア帝国貴族の食事の豊かさを感じました。反面、ファーガス神聖王国の食料事情は読んでて辛くなってくる……ジャガイモがない中世の北国には住みたくないですね。イングリットの趣味が「食べること」になるのも納得。
 ちなみにキャラ個別の分析で一番好きな内容はイグナーツです。商取引で異境のスパイスと料理に触れるって素敵じゃないですかー 大航海時代! だからレスター諸侯同盟の食文化はそそるものがありますね。イグナーツについてはシャミアとセットで下記に本と同じこと書いてあります。オススメ。

 灰狼の学級だとハピがいつのまにかレオニーを上回って好きな料理数1位だったり、コンスタンツェがバルタザールと好きな料理ひとつも一致しなかったり追加キャラなだけあって極端な好みしてるなという印象でした。
 キャラ別以外に食堂メニューごとの解説も充実していて、どの料理も美味しそうでした。特にキジの揚げ焼きデアドラ風、満腹野菜炒め、激辛魚団子はよだれが出そうになりました(チーズ、トマト、辛いものが好き)。

最後に

 キャラの関係性よりどちらかというと社会構造や経済活動、歴史、文化といった人文地理学的な設定の凝ったゲームが好きな自分にとって『いただき!ガルグ=マクめし』は最高の読みものでした。中世~近世ヨーロッパ社会への理解が深まるとともに改めてFE風花雪月は神ゲーだと強く思いました。ファイアーエムブレム風花雪月はいいぞ。


ΩND

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