マーケティングの考え方は、建築家の目的達成のためにも役にたつ

 久々の更新になってしまいましたが、本日は、最近読んだ中で非常に興味深かった書籍をご紹介したいと思います。

 その書籍は、森岡毅さんによる『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』という書籍です。タイトル的には、良くウェブ上で見られるようなキャッチコピーではあるような気もしますが、中身は非常に素晴らしい本でした。

 森岡さんを私が知ったのは、NHKのテレビ番組「プロフェッショナル仕事の流儀」でした。当時USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)にマーケーターとして勤務していた森岡さんを密着して、ハリーポッターのアトラクションの現場に密着したドキュメンタリーでした。その内容が非常に印象深くて記憶に残っていたので、たまたま本書を書店で見かけて購入してみたのでした。

 この書籍は、その副題「成功を引き寄せるマーケティング入門」というタイトルの通り、マーケーターとして実践の現場で活躍する森岡さんが、その基本を平易な言葉と、自身の経験してきた実例をもとに分かりやすく解説しています。

 マーケターがどのような存在なのか、私自身良く知らなかったのですが、この本を読んだ後に思ったのは、「企業や事業の目的を明確にし、それを実現するための戦略・戦術を練り、成果を達成するまでの全てに関わる人たち」なんだということです。実際に、手を動かして、モノを作ったりすることはないかもしれませんが、関わる全ての人達に指示をしたり、その理由を説明したり、時には励ましたりしながら、プロジェクトを成功に導く。。。そんな仕事を森岡さんはしているようでした。

 書いていて思ったのですが、これって建築家の仕事にも共通しているなあとも感じますね。大きな目的(建物を建てる)に対して、関わる人々を納得させて、施工者とも打ち合わせて、モチベーションをもって仕事して貰うように動きながら、完成を目指すという。建築家の方も共感して読んでもらえるかなと思います。

 この書籍を読んでみて、思ったのは、何か目的を達成したいと思った時に、それを漠然と考えてやみくもに行動するのではなく、目的に向かってを順序立てて理論的に思考を重ねていき、戦略を練り、どこに経営資源を投資するかを判断し、実際の現場で、どのような振舞いをするかという戦術を練ることで、その目的が達成する確率を上げる手法、それがマーケティング的思考法なんだなということです。

 この書籍を読んで、その思考方法について知ることで、建築家が、自身の活動や目的に向かって行動する際に、非常に大きな助けになるのではとも思いました。

 ただ、個人的に思いますのは、マーケティングというのが、基本的に企業の売り上げを伸ばすということを目的として研究された学問であるので、我々のような建築業界に存在する人達にとっては、少し違和感があるかもしれません。というのは、建築という分野は、歴史についても配慮する必要する必要がありますし、単純に営利を追求する行為とも違うと思っているからです。ただ、私は、この本に書かれている手法は、「営利を増やす」という目的だけでなく、その他にも応用が利くのではと読んでいて感じました。

 あと、基本的に大規模の企業に属する方が書かれた書籍ですので、そのスケール感覚が、我々の環境と比べて巨大であるという違いはあるかなと思います。ただ、読んだ限りでは、スケール関係なく応用可能な思考法が書かれていると思いました。

 建築家の皆さんがもつ、それぞれの理念や目的を実現するために、そのための戦略・戦術のバリエーションを増やし、アイデアを生み出す参考になる書籍だと思います。

 ツイッターでも先日書いたのですが、建築家の世界って、本当に天才がおおいんだなあと見ていて思います。素晴らしい作品を実現し、それが華々しくメディアを飾り、さらに素晴らしい仕事が実現されていく。。もちろん、背後には血の滲みでる努力や思考があるとは思っているのですが、側から見ていると、本当に天才だなとおもってしまう自分がいます。

 私自身は、本当に凡人だと自負しているので、アーキテクチャーフォトが皆さんに認知されるまでの約10年間に、どのような方法が考えられるか、戦略・戦術をどのようにすればよいのかということを、建築以外のウェブ上の記事や様々な書籍を読んで勉強してここまで、やっとここまでに辿り着いたという感覚があります。

 そして、例えば、天才的な意匠の才能を持った人たちが、このような書籍を読んだり、学んだりすることで、さらなる飛躍があるとも思うのです。(もしかするとそれは、有能なプレスや編集者とのパートナーシップで実現するということもあるかもしれませんが。)

 H&deMのジャック・ヘルツォークは、プリツカー賞の受賞スピーチの中で、自身がアメリカでの建築を実現するためには、ハーバード大学で教鞭をとることが非常に重要だったと語っています。これは、ある意味では、理想的な建築を実現するためには社会の中における戦略性が必要だと語っているとも読み取れると思います。

 このブログでは、建築家の皆さんが、より飛躍するためのアイデアのキッカケになればと思い、今後も色々と書いていきたいと思います。

 引き続き何卒宜しくお願いいたします。

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