「特化する」という戦略

こんにちは。

今回は、少しブランディング的なお話を書いてみたいと思います。

突然ですが、皆さんは、自分自身の活動を一言で説明する事ができますか?

もしくは、自分の活動が、友人などによって、どのように説明されているか想像することは出来ますか?

もちろん、上記が上手くできれば絶対良いという訳でもないのですが、もし出来るとすれば、皆さんの活動は、間違いなく、より広く、多くの人たちにに認識されている可能性が高いと言えると思います。(より認識されるほど、自身の活動によいフィードバックがもたらされると思います。)

自身の活動が、自身の知らない所でも、「伝言ゲーム」のように伝わっていく状況を作ること。エイトブランディングデザインの西澤明洋さんによれば、それがプロジェクトが成功につながるブランディングの重要な要素だそうです。(西澤さんにつきましては末尾で改めてご紹介させていただきます。)

そして、その為のひとつの方法が「特化する」ということなのだそうです。(特化する事で、活動を説明し易くなり、情報が伝播する状況を作りやすくなる。)

建築の世界を見渡してみても、「特化する」ことが良い効果をあげている事例を見つけることができます。

例えば、建築界の巨匠・安藤忠雄さん。活動当初より、打放しコンクリートを使用して建築作品を作り続けています。もちろん、安藤さんの人柄や空間構成の力があるのは前提ですが、「打放しコンクリート」に特化する事を決めてしまったことで、その活動が社会に伝播する事を助けたのは間違いないと思います。

私の大学の先輩である建築家の佐久間悠さん。彼は、建築関連の「法規」に特化した設計事務所( https://goo.gl/Xd9yV4 )を運営しており、法規を入り口として、自身が設計する以外にも法律の専門家として様々な建築プロジェクトに関わったりしています。

また、建築家の石川淳さん( https://goo.gl/9pL6MV )は、「ハコノオウチ」というボックスシルエットの住宅と、「OUCHI」という家型の住宅をシリーズ化して見せることで、自身の設計する住宅を、二つの形態に特化しているようにサイト上で表現しています。(初めて石川さんのサイトを拝見した時なるほどと思いました。)サイトを訪れたお施主さんにとっては、石川さんがどのような人か理解するのに、非常に分かりやすいと思います。

このように、建築の世界でも、「特化するという戦略」を巧みに選択している方々がいるわけです。

ここで、特化した場合と、特化しなかった場合を、凄く分かりやすく紹介している事例があったので引用させてください。(この図は、中川淳さんの書籍『経営とデザインの幸せな関係』p102に掲載されています。)

「単品ブランド」=特化する、「総合ブランド」=特化していない
と翻訳してみてみてください。
「ブランド力」は、その活動の伝播の度合いを表しているといったところでしょうか。

そして中川さんは、下記のようにこの図を説明します。

コップに水を注いでいき、水のかさがどんどんたかくなればなるほどよいブランドになってきていると考えてください。ではどのようにコップを置けばより効率的に水かさがあがるのかというと、答えは底面積の小さなコップを置くことです。そうすると同じ水の量でも底面積がちいさいほどみずかさは高くなるわけです。

つまり、何かに特化しして活動を積み上げることで、同じ時間や労力をかけつつも、早く効果を上げることができるのでは、と書かれているのです。

中川さんは、伝統工芸関係のプロダクトを製造や販売されている方ですので、一品生産の建築業界とは違った環境ではあると思うのですが、私はこの図をみてなるほどと腑に落ちる部分がありました。

もちろん、全国をターゲットとするプロダクトの製造と、地域との関係の中で存在する設計事務所では、異なる部分も大きいかと思います。ですので、やみくもに「特化」すれば良いとは私も思っていません。

ただ、ある種、様々なものが飽和した現代においては、一つの選択肢・戦略として、興味深いのではと考えていますし、建築の世界でも応用できる考え方であるとは思っています。

如何だったでしょうか?

自身の活動を振り返ってみても、アーキテクチャーフォトは、建築意匠に特化していたからこそ、ここまで、多くの皆さんに見て頂けるようになったのだとも思います。

「特化する」という戦略もあるんだな。と皆さんの視野の拡張につながったとしたら、これほど嬉しいことはありません。

引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。

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西澤明洋さんについて。

ブランディングについて、もしご興味ありましたら、私の大学の先輩でもありますエイトブランディングデザインの西澤さんの書籍を読んでみてください。( http://amzn.to/2iB8tZj )西澤さんは、学部で建築を学んだ後、大学院でブランディングを学び、企業等に勤務の後、自身の事務所を立ち上げた方です。根本的な考え方の部分に建築的な所があると私は感じていて、建築家の皆さんが読んでも、スッと理解しやすい理論で書かれた書籍で非常にオススメです。



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