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薔薇ノ木二薔薇ノ花咲ク

『ついに』なのか『やっと』なのかは判りませんが、今回でこの雑文も10回目を迎えました。今月は誕生月でもありますし、特別な気分で原稿用紙に向かっています。もうしばらくがんばりますのでお付き合いのほどを…

友人の誕生日、自身はサプライズを仕掛けるのが好きです。渡す物やタイミングを考えるのは時間が楽しい。ただ、自分では気が付かなかったのですが、僕はプレゼントをもらってもあまり喜んでいないらしいのです。反応が薄いんだそう。
でもこれにはちゃんとした理由があって、それには母の影響なのです。

母はまさに船乗りの奥さんで、父が航海中には、子供の喜ぶことは、何でもしてやりたい母親役と厳しくしつけようとする父親役の両方の役割をこなしていました。恐かったけど、本当に明るくさっぱりとした人。
おかげで、この向日葵のような人に僕達兄弟は数々の騒動に巻き込まれました。

その一つが『カレーコロッケ騒動』。
地元の中学は給食がないので、弁当を持参します。入学して数ヶ月が過ぎた頃、部活を終えて帰宅した僕に母が聞きました。

母:『今日のお弁当はどうだった?』
私:『美味かったなあ。特にカレーコロッケは最高だったね。』

それを聞いた近所のスーパーへパートに出ていた母は、業務用の冷凍カレーコロッケを定期的に買い込み、僕は高校を卒業するまで、毎日、それに付き合うことに…。
母の気持ちを考えると何も言えず、それからは味について聞かれても、『まあまあかな。』と控えめに答えるように心がけ、いつのまにか何でも控えめに喜ぶ性格になっていました。後で聞くと、実は母も同じ性格の祖母から育てられたそうで、いずれ僕もそれを引き継ぐことになるのかもしれません。
北原白秋が『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲く…』と書きましたが、世の中には当たり前だけど不思議なことってありますよね。こうした親子の絆というのも不思議なものだと思います。

話は変わりますが、今話題のガン告知について紙面の都合もあるので一言だけ。僕達は『生き方』は選べますが、『死に方』は選べません。『死』ほど誰にでも平等に、しかも突然にやってくるものはありません。もし残された時間が判っているならば僕は告知して欲しいと思っています。僕の人生なんですから。でも、家族には告知できないでしょうね。矛盾しているけど…。その矛盾が人間らしいといえばそうかもしれません。

最後は少し暗い話になりましたが、秋は食べ物が美味しい季節です。
食べ過ぎのおなかを見て、ため息が出ないようにセーブしたいものです。

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