見えない音を追いかけた青春、とても特別でかけがえのない興奮(3/5)

こんにちは^^
現在、【世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方】という本を読んで、自己理解を進めている途中であり、そして「得意なこと」を見つけるための方法に取り組んでおります。
その際、自分の過去の経験を掘り出す必要があったため、前回に引き続きその内容を記事にしているところです。前回の続きは以下の記事であり、今回で3回目になります(全5回)。

前回までのあらすじ

わたしは聴覚障害があり、すべての音がモザイクのようにぼやけて聞こえます。それでも、自分なりの音楽の楽しみ方があり、歌のある曲に限れば、歌の字幕がある動画を見ることで、字幕を通じて音楽の世界を楽しむことができます。

数年前、わたしはAKBが好きで、AKBの音楽にもはまっていました。しかし、AKBには多くの曲があり、字幕のある動画が存在しない曲が何曲もありました。そこで、わたしは字幕のある動画が存在しなくても楽しむことができるように、自分で字幕を付けて曲を楽しむことに決めました。

自分で字幕をつけるための方法として、最初は「同じ個所を何度も繰り返し聞き、しっくり来るタイミングを探して、字幕を付ける」という単純な方法でやってみることにしました。音がモザイクのようにぼやけて聞こえたとしても、歌詞の内容がわかっているならば、ある程度歌っている内容を把握することができ、歌っているタイミングもわかるのではないかと思ったからです。

しかし、曲には歌の部分だけではなく、ギターやドラムなどの伴奏部分もあり、それらもモザイクのように混じって聞こえるため、見極めるタイミングが困難ということがわかりました。そこで、別の方法を試すことにしました。

口の動きを見て言葉を理解する「口話」

歌詞の内容がわかっていれば、わたしの耳でもそれなりにいけるのではないかという自信がありましたが、その方法は難しいということはわかりましたで、聴覚に頼らない方法でやってみることにしました。

それは、視覚に頼る方法であり、「口の動きを見ながら歌のタイミングを掴む」という方法です。わたしは普段、聞こえる人とコミュニケーションを取るときは、筆談やパソコンのチャットでやり取りすることも多いですが、声と口の動きを見ながら相手の話している内容を読み取っていくこともあります。

そのような言葉の読み取り方法は漫画でいえば「読唇術」という言葉のほうがなじみのある人も多いと思いますが、わたしのような聴覚障害者の間では「口話」という言葉のほうがよく使われています。

「口話」は主に口の動きを見て相手の話を理解するためのコミュニケーション方法であり、わたしも半分独学ではありますが、なんとなく口の動きを見ただけで多少は相手の言っていることがわかります。(最近はマスクしている人が多く、コミュニケーションが取りづらくなっておりますが。)

「口話」はとても難しい

ただ、「口話」(「読唇術」)で相手の言葉を読み取ることは非常に難しく、口の動きだけを見て相手の言葉が100%わかる、というのはほとんどありません。

わたしの場合、声の聞き取りと合わせたとしても、せいぜい50~60%、相手の言っている内容がわかればいいほうです。個人差はありますが、わたしが知っている範囲では「口話」の訓練を日常的に受けていて上手な人でも、常に100%完璧にわかる、というのは非常に少ないかな…と思います。

口の動きを見て言葉の内容を理解することがどのように難しいのかというと、例えば、「ま」・「ぱ」・「ば」行の発音では、発音前に一度口を閉じて唇を結んでから口を開けて発音するというという共通した口の動きがあります。これらは口の動かし方が似ているために、言葉の読み取りが難しくなります。

「ま」・「ぱ」・「ば」行に共通する発音時の口の動かし方

上記の場合、以下のように口の動かし方が似ている単語の例があります。実際に鏡の前に立ってみて、以下の単語を声を出さずに口だけで動かして見てみると、少しはその難しさがわかるかもしません。

例1:あん【ぱ】ん ⇔ あん【ま】
例2:た【ま】ご ⇔ た【ば】
例3:【め】んどう ⇔ 【べ】んとう

特に、例3の場合は、めんどうの「ど」と、べんとうの「と」の部分も、口の動かし方がとても似ています。声も合わせて聴かないと「と」なのか、「ど」なのか、どっちで言っているのかわかりづらいと思います。

また、他の音を発音する場合でも、言葉の読み取りが難しい時があります。例えば、「ら」行は舌を口内で上に一度くっつけてから、舌を下へ動かして発音するという特徴的な動きがあります。

その時、発話する相手が舌の動きが見えるくらいに口を大きめに開けていたとしたら、口の中の舌の動きが見えるので、読み取る側としては「ら」行として読み取りやすくなります。逆に、発話する相手が口をほとんど開けずに発音していた場合は読み取りが困難になります。

ゆえに、「口話」で相手の言葉を読み取ろうとする方法は、コミュニケーション時においては、会話が成立するかどうかは、相手の話し方に依存するところが大きく、アナウンサーのように口を大きめに開けてはきはきと話しているか、ぼそぼそと口をあまりに動かさずに語りかけるように話しているかどうかで変わっていきます。(以下に例として図を張り付けてみました。)

理解しやすい・難しい口の動かし方の例

そのため、わたしのように感音性難聴の聴覚障害がある場合は、「口話」でコミュニケーションするときには、口の動かし方だけを見るのではなく補聴器を付けて声も合わせて聞き取ることで、総合的に判断する場合が多いです。(それでもしょっちゅう間違えることがあるので、読み取った内容をそのままオウム返しのように復唱してみて、読み取り内容が正しいか都度、相手に確認してもらったりしています。)

または、挨拶や短い会話の時のみ「口話」を用いて、長い会話や重要な話(仕事上の連絡事項等)では「筆談」「パソコンによるチャット」などで確実にやり取りするなど、場面に応じて使い分けることが多いです。

もちろん、聴覚障害の程度や、「口話」の読み取り技術等、色々と変わってくると思いますが、「口話」はコミュニケーション時において、とても難しいものと認識していただけたならば幸いです。

歌詞の内容がわかれば「口話」の効果上昇!

話が大幅に逸れてしまいましたが、歌のある曲に字幕を付けるときは、口の動かし方を見て言葉を読み取る「口話」という方法はある条件を満たすときにかなり有効になります。

その条件とは、
①歌詞の内容がわかっていること
②歌手の口の動きを見ることができる映像があること
です。

コミュニケーション時において会話が成立するためには「相手の話している内容を理解すること」が必要かと思いますが、今回のように字幕を付ける場合は、「歌っているタイミングを把握すること」ができればよいです。
そのため、事前に歌詞の内容を把握しておいて、歌手が実際に歌っているシーンのある映像を見つけて、その歌っているシーンを頑張って「口話」で読み取れば、なんとかタイミングを掴むことができるようになります。

わたしの場合、口の動きだけ見て発している音を正確に認識することは難しいのですが、「あ」「い」「う」「え」「お」の母音は口の動きを見るだけで、わりと見分けることができます。そのため、「か」「さ」など、どの子音で発しているのかがわかっていなくても、どの母音で発しているかさえわかれば、歌詞の内容とも照合していって、歌詞のどの箇所を歌っているか推測することができます。
あとは補聴器も付けて歌も一緒に聞き、根気よくタイミングを掴んでいきます。

歌手が歌っているシーンのある映像を探すときには、歌唱シーンやダンスシーン等、口の動きが映る可能性のある動画を曲ごとに探し出しました。歌唱シーンやダンスシーンならば、実際にその映像に映る歌手の口の動きを見てタイミングやリズムを把握することができますし、特にダンスシーンならば、口の動きだけではなく、ダンスで表現する手や足の動き、体さばきから、タイミングやリズムを予想することもできます。

ちなみに当時は、曲ごとに映像を探すとき、Youtubeやニコニコ動画などの動画配信サービスを利用して視聴したり、新曲のCDに同梱されているDVDに修理録されたPV(プロモーションビデオ)を見てみたり、AKBのライブを収録したDVDを購入して、ライブ映像を実際に見てみたりもしました。

その時は、「なるほど、この個所はこのタイミングで歌っているのか…」など、楽しみつつも、歌のタイミングを一緒に分析もしていました。

全ての曲で口の動きが映る映像があるわけではない

それでも、わたしの好きなAKBの曲を全て網羅する、というところまではいきませんでした。全ての曲に歌手の口の動きを見ることができる映像があればよかったのですが。

例えばプロモーションビデオでは、実際のダンスシーンや歌唱シーンがあるわけではなく、代わりにドラマのような映像があって、歌っているところを見られるわけではありません。

また、映像自体存在しない曲も沢山あるので、それらの曲には字幕を付ける作業に手が出すことができません。「口の動きを見ながら歌のタイミングを掴む」という方法は、当時、出ていたAKBの全ての曲の中で、だいたい3~4割くらいはカバーできた(歌のタイミングを把握することに役立った)程度でした。

ですが、それで終わりにはしませんでした。わたしにはまだ他の方法に心当たりがありました。それは「カラオケ字幕を参考にする」という方法でした。

「大まかに」タイミングを把握できるカラオケ字幕

音を聞くだけでタイミングを掴めそうにないとき、歌っているときの口の動きが映っている映像が存在しないとき、そのときのわたしの自分なりの切り札として残されていたのが、カラオケ字幕でした。

わたしは、音の高低を正確に把握できないので、音程を取りながら歌うことは難しいのですが、それでも歌うことは好きで、歌っていると気持ちが良くなるので、カラオケには時々行ったりしていました。

初めてカラオケに行ったときに思ったことかどうかは忘れましたが、歌っているときに、カラオケ映像の字幕の色が音に合わせて少しずつ変わっていく様子を見て、「視覚的に把握できるから歌うタイミングも掴みやすいな…」と思いました。その時は、字幕を付けることに活かそうとは思っていませんでした。

ですが、自分で歌に字幕を付けるようになって、歌のタイミングを把握するために、YoutubeなどでAKBの曲がある動画を検索していたときに、「歌ってみた」等でカラオケの画面が映る動画も一緒に出てくることがありました。

そのカラオケの画面が映る動画も見て、「これ、字幕を付けるときのタイミングにも活かせるんじゃないか?」と思いつきました。(自力ではなく、若干他力頼りになってしまいましたが。

そのため、「口の動きを見ながら歌のタイミングを掴む」という方法が使えないときは「カラオケ字幕を参考にする」という方法でやってみることにしました。

字幕を付けたい曲があれば、Youtubeでカラオケ画面が映っている動画を探しました。また、ネット上に動画が存在しない場合は、時々カラオケに行き、どんなタイミングでカラオケ字幕の色が変わるのかしばらく眺めていたこともありました。

カラオケ字幕はあくまでも参考程度。

それでも、カラオケ字幕がない曲がAKBにまだまだたくさん残されていました。またカラオケに行くという手段はお金がかかるので、何曲も使える方法ではありませんでした。

それに、「カラオケ字幕を参考にする」という方法は、あくまで「大まかに」歌っているタイミングを把握できるという程度でした。実際に自分で字幕を付けるときに、わたしの中で「このタイミングだ!」と思って確信を付けられるほどのものではなかったのです。

カラオケ字幕で色が変わった通りに、字幕を付けてみようとしましたが、曲を聴いても、カラオケ字幕で歌っているタイミング通りに本当に歌われているのか、自分の中で常に疑問がありました。歌っている個所を聞いても、どうにも自分の中でしっくり来なくて、「本当にこのタイミングのままでいいのかな?」と何度も曲を聞いていました。

前回でも説明したことがありますが、以下の図のようにわたしは歌う内容がわかっている場合に、ある程度自分の中で記憶している音の形とすり合わせて、「この音だ!」と自分なりに納得することができます。実際の曲では歌だけではなく伴奏部分もあるため、色々な音がモザイクのように入り混じってはいますが、「この音だ!」という感覚は少しは残っているため、その感覚をアテにすることができます。

音の記憶(音の形)と感じた音のすり合わせ(前回の記事から図を流用)

しかし、カラオケ字幕で色が変わるタイミングを参考にしても、自分の中の「この音だ!」という感覚があまり得られませんでした。はじめは、「自分の中の感覚よりは、聞こえる人が聞く感覚のほうが正しいだろうし、このままでいいか…」と思って、疑問を持ったまま、何曲か字幕を付けたことがありました。

ですが、付けてみて曲を聴いたものの、自分の中でどうしても納得ができなくて、同じ曲に対して何回も聞き直して、字幕を付け直したりしました。このようなことが何度もありました。

最後の手段として残っていたわたしの切り札、「カラオケ字幕を参考にする」という方法でしたが、歌っている映像がない曲に対して安定して字幕を付けられる有効打とはなりませんでした。そのため、字幕付け作業がはかどらない期間が続いていた時がありました。

しかし、しばらくすると、インターネットで探していた時にある技術を見つけました。そこで、字幕を付けるための方法がひとつ、天啓のように閃きました。

とても文章が長くなってすみません。ここまで読んでくださってありがとうございます。次回に続きますm(_ _)m

次回はこちらです。↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?