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バイカーへの道②入校式

その日がやってきた

天候は雨…
しかもどっしゃぶりの雨
嵐にも似た雨

入校式の時間割は、色んな手続きや視力検査、概要説明と館内案内、適性テストなどと、夕方からは2時間の実習

この歳になっても、初めての事や初めての場所は大変な緊張感が伴う

教習所まではうちから車で45分ほど
嵐みたいな日だからワイパー全開
あんまり悪天候だから、ひとりなのに「マジか…」とか呟いたり、苦笑いしたり

到着して車から降りる時に傘を開いたら、秒で傘が煽られてホネが折れ破損…
それくらいの悪天候
てか、ナニこの洗礼

折れたプランプランの傘を片手に「ここでいいんですかぁ?」という顔を全面に出して建物の中へ

若い男の子とそのお父さんが丁度手続き中で、いきなりずぶ濡れで入ってきた不思議顔の私を親子で仲良く振り返り見てきた
目の動きは明らかに上下しながらこちらを見ている
なんだよ、中年ずぶ濡れ女がバイク乗りたくて来たんだよ、おかしいか?と思いながら見つめ返してみる

受付で書類に記入しながら「こんな日でも乗るんですかぁ⁇」と恐る恐る聞いてみたら「乗りますよー」との返答に「まあ、そうですよね」と自分を納得させる

校長と、教官が2人、受付事務の女性が2人の二輪専用の教習所

校長がこれまたとても物腰柔らかな方で、ほっとした

同じ日に入校した人は私以外はみんなメンズで、大型免許の人、中型免許の人、小型免許の人、歳もバラバラで多種多様

何回繰り返されているであろう入校式の一連の流れはテキパキと進められていく

さすがだなぁと感心してしまうほど説明が上手くて心の中では「ブラボー教官!」と叫んでいた

いたってポーカーフェイスで

外は相変わらず雨風が強い
昭和の建物は一部雨漏りで、ソファが水浸し

少々の休憩時間、テレビではクレヨンしんちゃんが放送されていて、仕方なくジーっと見ていた
話の内容は全く入ってこないけど、心の中では野原しんのすけの真似をした

いたってポーカーフェイスで

18時からいよいよ実習
サイボーグみたいに色々つけて、第一段階教習生の証、赤いゼッケンをつけて、さらにカッパと長靴を装着

寒い
寒さと緊張から気を抜くと震えそう

ドキドキ感を誰かとシェアしたくてたまらないのだけど、これは女子特有のものと自覚している以上近くのメンズに相手してもらう事もできず、行き場のない内側のおしゃべりはうるさいほどだ

どっしゃぶりの屋外に出て、準備体操をして、それから自動車からの死角はこの位置だよーというような説明を受ける
が、雨風のため話しは半分しか入ってこない
代わりに首元からは冷たい雨が入ってくる

それぞれに配車されたバイクの横に立つ

ム……重い…

ビックリするほど重い…
センタースタンドを外したと同時に支え切れず早速倒してしまう
隣のハーフのメンズが起こすのを手伝ってくれた
すみません…

自分の支えれる限界までバイクを傾け、最後は手を放し素早く足を抜き横へ逃げる
…コワイ

倒れたバイクを起こす
…いや、ビクともしない

引いて歩いて移動するのも一苦労

大丈夫か、私‼︎

いよいよ運転操作へ

46歳の頭と身体の連動
極度の緊張が相まって、全然言うことを聞いてくれない

教官の教えは完璧だ
きっとこういう私みたいな人だって何人もいたに違いない

けど、あまりにも酷くないか?私!

まずスピードがコワイのだ
そして焦ってクラッチ、ギアチェンジの連動と、クラッチとブレーキ、この使い方がもうむっちゃくちゃになってしまう

だから、スムーズに止まれない
何回言われても、きれいに左脚を着いて停止位置で止まれない

落ち込んだね…
こんな簡単な事がこんなにもできんもんかと、落ち込んだね…

教官はずっと励ましてくれるし、ちょっとでもうまくできると褒め称えてくれた

そう!褒められて伸びるタイプです!

終了時間ギリギリに、なんとかかんとかスーっと最後停止ができて一安心

「早くこの時間よ過ぎろ!」と祈ったほどの嵐の2時間がやっと終了したのだ

ぐったり…

ベッタベタになって、ぐったりしているものの、心はどことなく嬉しかった
ああ、いよいよ始まったんだ!(↔︎とうとう始めてしまったんだ)という気持ち

相変わらず色んな気持ちを誰かと共有したいが、イタイおばさんは回避したくグッと我慢して防具を外して身支度を整える
これが女子ロッカーならワーワーキャーに違いない

次の予約をする時に受付てくれたのが校長で、今まで溜めていた言葉をついに口にしてみた
いや、口から漏れた

「もう〜ドキドキしましたぁ〜‼︎

校長は優しく、最初はそうだよねとかなんとか言ってくれていたけど、解放感に満たされてたからあんまり聞いてなかったみたい
よく覚えてない

次はシミュレーター、その後は実習が続く

シミュレーションならバイクに乗らなくて済む…という訳のわからぬ安心感を覚えた自分に引いた

続く

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