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ギターながし (春日八郎)。

春日八郎が歌う「ギターながし」。矢野亮作詞、吉田矢健治作曲で、歌手として踏み出した春日の初期の一曲です。大正13年10月に福島県会津坂下町に生まれた春日八郎は、本名を渡部実と言います。両親とも職人と云う、裕福とは言えないまでも堅実な家に生まれ育ちました。会津の田舎町にも流れて来る流行歌に傾倒した彼は、上京して工業学校から音楽学校へと転じるのですが、折しも戦争の時代であり応召されて台湾で終戦を迎える等、終戦前後は波乱に満ちた時期を過ごします。その後キングレコードのテストを受けて合格するのですが、すぐに新曲にあり付ける訳ではありません。幸にも縁あって結ばれた奥さんの伝手で、同じキング専属の大作曲家江口夜詩の門下生になりました。そして漸く吹き込んだ「赤いランプの終列車」がヒットして、その名を世間に広めたのです🎙️。

「ギター流し」はその名の通り、紅灯の巷に生きる夢も儚い流しの心情を歌った裏町演歌。悲しげなギターソロのイントロから始まって、すぐに春日の歌に入ります。作曲者吉田矢健治は明大マンドリン倶楽部出身なので、先輩である古賀政男の影響が所々に感じられます。三番構成で何処か枯れた様な哀愁ある高音が聴きものでして、この張りのある歌声こそが春日の最大の武器でありました。言い方は良くないのですが、この様な世間の隅で暮らす人々を描いた流行歌は、当時は寧ろ売れ線であり、そう言ったジャンルは従来の折り目正しい正統派歌手では活かせないものがありました。当時の春日は岡晴夫や小畑実らと比較すると少し地味であり、そこがまた曲とマッチしていたと言えるでしょう。裏面は三岐麗子の歌う「ハマの仇花」が組まれており、昭和28年に発売されました😀。

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