天国に結ぶ恋 (徳山璉・四家文子)。
徳山璉と四家文子の「天国に結ぶ恋」。“悲恋大磯哀歌”とある此の歌は、実際に起きた心中事件を題材にした映画主題歌であり、作詞の柳水巴は西條八十、作曲の林純平とは松平信博の変名でした。昭和7年5月9日、神奈川県大磯町にある小さな山林にて若い男女の遺体が発見されます。検死の結果、二人は学生であり死因は服毒死である事が判明し、動機を調べるべく捜査が開始されるのですが、またも奇妙な事件が発生。なんと保管してあった女性の遺体が一時的に姿を消してしまい、何とその犯人は土地の関係者である事が判明。亡骸とは言え、あまりに美しいので隠したと云う訳であり、此の心中事件は只ならぬ熱気を帯びる事になるのでした。過熱する報道に加えて、それを美化する風潮も高まり、遂には事件一ヶ月後に最速の映画化と云う、今では信じられない様相を呈しました🎬。
映画は「天国に結ぶ恋」と云う題で松竹が製作、出演は竹内良一、川崎弘子などで、五所平之助が監督を務めました。同名主題歌はビクターの人気コンビの徳山璉と四家文子が歌う事になり、四番構成の陰旋法のメロディが付けられました。一・二番は徳山、三番は四家、四番は共唱となっており、二人共人生に疲れた様な寂しげな歌声を響かせます。余りにもセンシティブな歌なので、西條八十も変名を用いたのですが、そのセンスは隠せるものではありません。特に三番はもろ西條のカラーが溢れていて、抒情的かつ上品な言葉選びには舌を巻くばかり。伴奏はギター、バイオリン、クラリネットのトリオで、そのシンプルで落ち着いたサウンドが曲をより引き立たせておりました。主題歌はポリドールからも発売されて、こちらは大木惇夫作詞、近藤政二郎作曲で、青木晴子が歌っています😀。
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