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此の唇から (打越昇)。

今や遠い遠い昔となった昭和初期。当時、海外の流行歌のレコードや楽譜が次々と日本に輸入されて隆盛を極めておりました。今夜はその中から「青空」「アラビアの唄」等とは違う無名の曲、打越昇の歌、ウェイン・コールマン・ジャズバンド伴奏による「此の唇から」を。原曲は1930年のMGM映画「悦楽の子供達」の主題歌“the whole  darned thing s for You“です。此の映画はクレーン・ウィーバーの原作、ハリー・ボーモント監督がメガホンを取っておりまして、出演はローレンス・グレイ、ウィン・ギブソン、ジュディス・ウッド等。劇中でグレイが美女らに囲まれてピアノで歌うシーンに用いられ、また自身もレコーディングしました。他にベンジャミン・セルビン&ニッカ・ポッカーズ楽団、また無名の頃のベニー・グッドマンらのレコードもリリースされております🎼。

「此の唇から」は原曲が出てすぐ、昭和6年初頭の発売。打越は他に「憂鬱」「雛菊に寄せて」などを吹き込み、ポリドールにも「底抜けさん」と云うナンバーを入れました。曲はミディアム・テンポのフォックス・トロットでアレンジされており、バンジョー、サックス、トランペット、トロンボーン、ドラム等がホットで温もりあるサウンドを奏でています。打越の歌唱はジャズソングとは正反対のバリトンであり、藤原義江や川崎豊の様なオペラ風の歌声でワンコーラスだけ担当。後は延々とバンドの伴奏の聴かせ所で、恐らくはダンスのBGMとしても重宝された事でしょう。此の楽団は他にも「キスメット」「巴里の屋根の下」等を録音する等、実演の他にレコードでも活躍したのですが、同じくフロリダ出演の菊池博の楽団と比較して人気が出ず、一年後に帰国してしまいました💬。

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