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”童話歌劇“蟲の音楽会 (大阪アカネ学院)。

刻々と晩秋の風が身に染みる此の頃。と云う訳で今夜は児童劇のレコードから、大阪アカネ学院一同らによる「蟲の音楽会」を。大正時代後半のレコードかと思われますが、演者や作詞作曲者の氏名や経歴については分かりません。此の劇団は一部資料では少女歌劇団とも言われておりますが、針を落とすと少年らしき声も確認できます。物語は月も大きな秋の宵、原っぱで松虫や鈴虫らが集まって、我が世の春を謳歌。子供達が大阪訛りで語り合いそして元気良く歌い出すのですが、宴たけなわの其の時、虫達の喧騒の中を野暮ったい蟻さんが通りかかります🐜。

松虫「蟻さん、何をしてるのかね?」

蟻「もうじき冬が来るから、食べ物を集めているのです」

お察しの通り、此の劇の正体は有名なイソップ童話「ありとキリギリス」です。「蟲の音楽会」と云う可愛らしさと賑やかさを感じるタイトルなので、私は様々な虫達の音色が入り混じった楽しい合唱劇かと思っていました🎼。

蟻さんが行った後で再び歌が始まりますが、先と違って妙に寂しげな音色とメロディ。それは正に刻々と確実に忍び寄って来る冬と、松虫達に降り掛からんとする災厄の到来を予見させるものがあります。裏面ではとうとう冬を迎えてしまい、暖かいねぐらに憩う蟻さん一家に辛うじて生き残っている松虫達が物乞いに来ます。そして蟻のママさんによって冷淡にも突き返されてしまい、雪が降る中を寂しく歌いながら彷徨い歩く羽目になるのでした。劇の伴奏楽器はピアノとバイオリンのみで、無論誰が手掛けたかは不明です💬。

大阪アカネ学院は、他に「コンチキ狐」などを出していますが、さしたる知名度もないまま解散したとか。然しながら、多くの同規模の小劇団が世に知られずに姿を消していく中で、こうしてレコードを残せたのは、何よりの僥倖であったと申せましょう😀。


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