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今宵誓いぬ (高峰三枝子)。

高峰三枝子の歌う「今宵誓いぬ」。西條八十作詞、万城目正作曲で、同名映画の主題歌でした。“歌う映画女優”として昭和12年から第一線で活躍していた高峰三枝子は、戦後もその人気を継続して銀幕のスターでありました。また「懐かしのブルース」や「別れのタンゴ」に「情熱のルンバ」と次々とヒットさせて、歌手としても一流の力量を誇っていたのです。三十代も半ばに入ると次第に女優業に重きを置くようになりましたが、その時期に出演した映画が「今宵誓いぬ」でした。マキノプロが制作しており、原作は「平凡」に連載されていた大林清の小説でした。これを田中重雄がメガホンを取り、出演は若原雅夫、千田是也、英百合子、片山明彦、そして高峰三枝子。もちろん主題歌は高峰が歌う運びとなりますが、映画の製作が遅延した為に主題歌のみが先行して発売されました💬。

「今宵誓いぬ」は、長年お馴染みの西條&万城目の楽曲。特に作曲者と高峰はデビュー時に入れた「旅の孔雀」以来の付き合いですので、気心知れた仲による安定した歌となりました。三番から成るスローテンポのブルースで、暗く沈んだ夜の帷の様なイントロからスタート。ヒロインの恋心をアネモネの花に喩えた歌詞は西條八十の得意とする手法であり、その花言葉は「儚い恋」だとか。高峰の呟く様な歌唱には熟女の艶と遣る瀬無さが溢れており、以前よりも一段と魅力が増しておりました。アネモネは南欧原産の多年草で主に春先に咲く花なのですが、此の歌の雰囲気は寧ろ初秋の静かな夜を想い起こさせます。伴奏にはビブラホン、サックス、バイオリン、トランペット等多くの楽器が使用されていますが、全体的に大人しめなサウンド。裏面も同じく高峰の歌う「愛のタンゴ」です😀。

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