小夜しぐれ (久富吉晴・渡邊はま子)。
今日も天気は不安定。帰りの電車に乗る時は曇り空でも、住まいの最寄り駅に着いたら大雨だなんて事は珍しくもありません。と云う訳で雨降る宵に相応しい一曲から、久富吉晴と渡邊はま子の歌う「小夜しぐれ」を。穂積久作詞、細田義勝作曲で、邦楽風のタイトルに反して軽快なパソドブルの旋律が用いられています。此の頃のビクターはコロムビアの安定した様々なジャンルの流行歌や、古賀政男を擁したテイチク、東海林太郎を筆頭にしたポリドールと、そこから分離独立したキング等のライバルレーベルらによって、ヒット曲メーカーのお株を取られている状態でした。当時ビクターには徳山璉や藤山一郎、小林千代子に小唄勝太郎と人気歌手が多く居たものの、此の時期は児玉義雄の「無情の夢」くらいしか大ヒット曲がなく、他は地味な小ヒット曲がある程度。大看板の割に他社よりも控えめな状態だったと言えるでしょう。此の「小夜しぐれ」もその時期の一曲です🎼。
此の歌はデュエットですが、当時の主流だったワンコーラスづつ交互に歌うのではなく、現在では至極当然の掛け合い形になっているので、当時としては斬新なアレンジだったと思われます。小雨の煙る夜、街明かりも細くなった夜更に忍び会う、または別れ行く男女の様を描いているのでしょうか、哀愁ある一曲です。久富吉晴は大阪府出身の若手声楽家であり、昭和9年末に「恋慕小路」でデビューし、しばらくビクターに籍を置く事になります。市丸と「流線メロディー」を入れ、古川緑波と「真平仁義」を歌っていますが、どちらかと云うとメインの歌手の相手役に回る事が多く、また歌唱法も地味なので最後まで精彩を欠いたのは残念でした。その後は指導者に転じ、時にはラジオ歌謡の録音も行なっています。渡邊はま子に関しては申すまでもない有名歌手ですが、最初のヒット曲「忘れちゃ嫌ョ」が出るのはもう少し後。レコードは昭和11年春に発売されました😀。
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