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酒の中から (有島通男)。

有島通男の歌う「酒の中から」。玉川映二作詞、古賀政男作曲で、日活映画「ジャズの街角」の主題歌として書かれました。喜劇であり、名匠渡辺邦男監督がメガホンを取り、出演は江川宇礼雄、岡譲二など。テイチクと日活は戦後に至るまで密接な関係にありましたが、その最初の黄金時代に書かれた内の一曲でした。此の明朗快活な歌は、当時ルディ・ヴァリーが歌ってヒットした「ステイン・ソング」に影響されて書かれたのか、六拍子のリズムとなっております。作詞の玉川映二とはサトウハチローの事で、彼は当時はポリドールの専属でした。従って他社で仕事する際は変名を用いたのですが、特にテイチクでは複数の名前をその時々で使い分けています。例えば「二人は若い」の時は星野貞志、「のばせばのびる」では江川真夫、「黒いパイプ」では倉仲住人と云った具合でした🎼。

「酒の中から」は陽気な宴会ソングでして、まるで胃腸薬のコマーシャルソングの様な趣きを覚える程。歌う有島の歌声も杉狂児に似た朗らかさです。全四番構成で、伴奏にはバンジョー、打楽器、バイオリン、シンバル、ベースなどが用いらており、バックは男女混成の賑やかなコーラス付きでした。また此の歌も二種類のテイクが出回っており、歌の終了後に拍手の入るバージョンが存在しています(手元のは無し)。有島通男は金沢の出身で、マイナーレーベルで南一郎などの芸名で入れた後にテイチク専属となり、またポリドールの廉価盤コロナでも活躍。戦後は郷里に帰り歌謡教室を主催しておりましたが、残念ながら40代で亡くなりました。裏面は美ち奴の歌う「二人きりなら」ですが、此の歌は後に「見ないで頂戴お月様」と衣替えして、神楽坂はん子が歌いヒットしています😀。

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