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微笑む青空。

奥田良三の歌う「微笑む青空」。堀内敬三作詞、井田一郎編曲で、作曲はベルリンとありますが、それはアメリカの大作曲家アーヴィング・バーリンの事。原曲は1927年に公開されたアル・ジョルスン主演映画「ジャズ・シンガー」の主題歌“blue sky”で、今も世界の何処かで演奏され歌われる名曲です。此の映画は世界初のトーキー作品でありますが、完全ではなく例えば此の歌が出て来るシーン等、重要な箇所以外は、従来の無声映画でした。物語はジョルスン演じる司祭の息子が主人公で、厳格な父親は讃美歌を覚えるよりもジャズに夢中な息子に辟易しています。そしてとうとう勘当されてしまうのですが、ミサが近づいた時に父親は病に倒れます。一度は実家に背を向けた息子もミサで父親の代役を見事に務めて讃美歌を歌い、そして其の父は息子を許し静かに世を去るのでした🎬。

「微笑む青空」はクイック・テンポで吹き込まれており、ブラス陣の前奏の後ですぐに奥田の歌に入りますが、歌唱パートはワンコーラスだけであり、針を下ろして1分足らずで奥田の出番は終わり。残りは延々とポリドール・ジャズ・バンドのプレイが楽しめる構成。当時ジャズ・アレンジャーとして大活躍した井田一郎によるアレンジは、どこか厳つい角張ったサウンドで、キレのあるバンジョーや妙に低音のドラムやシンバル、そしてハウリング寸前のトランペットやサックスの縦横無尽な伴奏は当時ならではと言えるでしょう。奥田の歌唱が一番限りのは役不足に思えますが、この時期のジャズソングの大半は伴奏が主体であり、歌は添え物でした。それでもそも存在感は薄れておらず、賑やかなプレイに流される事なく丁寧なテノールを聴かせます。レコードは昭和5年初頭の発売😀。

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