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黒い瞳 (ディック・ミネ)。

晩秋も本番、こんな季節の宵はタンゴが聴きたくなるものですが、その中から今夜はディック・ミネの「黒い瞳」。ラベルには未記載ですが、三根徳一作詞・編曲で、言うまでもなくミネ自身のアレンジ。当時名うてのバンドマンとして、時にドラマー、時にギタリスト、そしてボーカルと八面六臂の活躍を見せた彼でしたが、淡谷のり子の勧めでプロ歌手になる事を決意。新興のテイチクに入社して、歌謡界に颯爽と登場するのですが、その最初のヒットが「ダイナ」「黒い瞳」のレコード。原曲はグレゴリー・ストーンのナンバーで、恐らくはロシア民謡を基に書かれた曲かと思います。当時は他にも「ペトルウシュカ」などロシア風の曲名と旋律にも関わらず、アメリカやドイツでアレンジされて世に出た歌が多数ありました。「黒い瞳」は原題名をそのまま“BLACK EYES”と云います🎼。

ラベルには“ディック・ミネ&ヒズ・セレナーダスとのみクレジットされておりますが、此のグループはミネのバンド仲間であり、そのメンバーにはトランペッターの南里文雄を始めとした極めてハイレベルな面々でした。「黒い瞳」は陰旋法のスローリズムで伴奏されており、全体的に暗く沈んだアレンジ。ミネはいつもの巻き舌ながらも重いタッチのボーカルで聴かせており、A面の「ダイナ」とは違った面を見せています。伴奏はトランペット、アコーディオン、サックス、ピアノ、ギターなど。録音機器の都合なのかどうも曇った様なサウンドですが、その暗い所が歌の世界観を盛り上げており、スラブ的な哀愁も相まって、心変わりしつつある恋人のつれなさが切なく歌われていました。A面共々大ヒットし、ミネは一躍その存在感を世に示す事に。レコードは昭和9年秋の発売でした😀。


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