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大東京の唄 (羽衣歌子)。

羽衣歌子の歌う「大東京の唄」。これは松竹楽劇部によるレビュー「大東京」の主題歌でした。手元に何の資料もないので演目やキャスト等の詳細は全く不明なのですが、其の背景には昭和7年10月1日に行われた東京市大合併があるかと思います。此の一大行事によって、東京は五郡八十二町村を合併して人口は五三万人に到達。所謂「大東京」へと発展し、それはニューヨークに次ぐ世界第2位の人口でもありました。同時に満州事変後の勝利とナショナリズムに湧いていた世相と云う事もあってか、日本中は極めて目出たい空気に包まれていたのです。歌の世界では「東京市民歌」「花の東京」「私の東京」「ミス東京」「大東京行進曲」などの東京讃歌が次々とリリース。商策として人気が上昇していた松竹楽劇部と組んだ東京の歌が生まれたのは、自然の流れでもありました🙂。

「大東京の唄」はビクターを退社して間もない羽衣歌子が歌っています。初期の松竹歌劇主題歌は宝塚の様に自前のスターではなく、外部の人気歌手達に委託する形でレコード化しておりました。作詞は「君恋し」や「浪花小唄」の時雨音羽が担当、作曲は豊富な知識を活かしたモダンな作風と得意とする堀内敬三であり、三番構成の行進曲風の明るいメロディとなっております。此の歌、一番の歌詞で云うところの♬武蔵野の伸び行く…の旋律は、松竹歌劇の団歌「桜さく国」(松本四郎作曲)の♬桜吹雪…の箇所と全く同じです。僅かな部分ですが、所謂サブリミナル的手法で松竹感をさりげなく出そうとしたのでしょうか。これの裏面は松竹楽劇部にも客演していた彌生ひばりが歌う「ララ東京」で、レコードは昭和7年秋の発売。同時に楽劇部は松竹少女歌劇団へと改名されています😀。

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