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身代わり五拾銭 (上原敏)。

土曜日に更新するのは、久しぶりの事。土曜は軍歌戦時歌謡と決めているので、その中から上原敏の歌う「身代わり五拾銭」を。サトウハチロー作詞、山田榮一作曲で、数ある戦時歌謡の一曲です。昭和10年代のポリドールを東海林太郎共に支えた上原敏は、股旅歌謡にマドロスソングと立て続けにヒットを放ち、そして日課事変下には多くの時局歌謡を歌いました。音楽学校卒業歌手とは違った、やや癖のある歌い方ながらも、爽やかな男臭さに溢れたその歌声に人々は酔いしれて、彼のレコードは飛ぶ様に売れて行きました。さてポリドールは外資系のメジャーレーベルながらも、コロムビアやビクターが発売する西洋風味で王道的な戦時歌謡とは一味二味も違う、庶民目線の濃口な歌作りに定評があります。此の「身代わり五拾銭」も、そんな大衆カラーが思い切り溢れる一曲でした🎼。

前線で敵の弾丸が命中して“やられた!”と思って胸に手を当てたら血は出ておらず、代わりに入れていた五十銭玉が身代わりになってくれた…思えば此の硬貨は出征前に農家の人から餞別として頂いたものだった…と云う物語になっています。解釈次第では、銃後の国民は兵隊さんの為にお金を弾みましょうと云うアピールにも見えますね。針を下ろすと、勇壮なラッパのイントロの後で短い前奏を経て直ぐに歌に入ります。全四番で構成で間奏には男性合唱団による「日本陸軍」のコーラス、後半もシンプルに決めて終わります。上原敏はまだ30歳なので、声には艶があり元気良く弾みがありました。直後に「波止場気質」が大ヒットし、上原もポリドールも我が世の春を存分に謳歌していたのです。裏面は青葉笙子の歌う「銃後だより」で、レコードは昭和13年春に発売されました😀。

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