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胸に咲く花 (江戸川蘭子)。

いよいよ今年の秋も今日で終わりです。個人的に晩秋から初冬へと移り変わる頃が好きなのですが、そんな時期に相応しい歌の一つが江戸川蘭子の「胸に咲く花」。安東英夫作詞、仁木他喜雄編曲で、松竹少女歌劇団公演「秋のをどり」の挿入歌の一つです。この演目は昭和7年に第一回目が上演されて好評だったので、以降シリーズ化されて多くの挿入歌が披露され、一部の歌はレコードとなりました。此の時代の松竹歌劇団の主な楽曲は、30年以上前に出たコロムビア発売の3枚組アルバムに収録されており、無論此の「胸に咲く花」も入っております。橋本与志夫氏の曲目解説は、それ以前にLP復刻盤発売の際に書かれたと思われ、ただ一言「欧州のタンゴと思われるが、詳細は不明」とあるだけでした。残念ながら数十年経過した今でも、原曲に関しての細かい事が分かりません🎼。

「胸に咲く花」はスロータンゴで書かれており、陰旋法のAメロ、Bメロから陽旋法に転じて江戸川のソロから生徒連の合唱にバトンタッチ、間奏を挟んでもう一度Bメロを歌って終わります。伴奏は数丁のバイオリンやアコーディオンから成り、全体的にソフトで繊細なサウンドを響かせます。赤く咲いた香り気高い花も、誰にも気が付かなければ萎れて枯れてしまう。儚さと憧れが詰まった歌でした。江戸川蘭子は艶やかで何処か思わせ振りな歌唱が売りで、松竹の最高傑作である「タンゴ・ローザ」の同名主題歌で其の歌唱力を認められました。他にも「血の薔薇」や、ラテンの「ラ・クカラチャ」に、ジャズソングの「上海リル」など名唱を残し、退団後は女優としてPCL映画に出演。歌手としてはビクターの専属となって暫くの間活躍し、平成2年に77歳で亡くなっております😔。


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