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怪盗小唄 (徳山璉)。

徳山璉の歌う「怪盗小唄」。西條八十作詞、中山晋平作曲です。昭和5年に「叩け太鼓」を歌ってビクター入りした歌手が徳山璉。当初は藤澤五郎と云う名前と使い分けながら、歌曲と流行歌を入れておりました。昭和6年初頭に本名で出した「侍ニッポン」が大ヒットした事から、以降は積極的に流行歌中心の歌手活動になります。「空覚の唄」「雪の渡り鳥」「かんかん虫は唄う」など、映画主題歌も沢山吹き込みましたが、その中には「怪盗小唄」と云う妙な歌がありました。これは直木賞にその名を残す小説家、直木三十五原作の「舶来文明街」が、俳優月形龍之介とそのプロダクションによって制作された際の主題歌なのです。剣戟スターとして著名な月形龍之介は、一時期奈良の生駒山に発声映画のスタジオを構えており、第一作として企画されたのが此の「舶来文明街」でした🎬。

詳細な内容は不明ですが、監督は冬島泰三が担当し、月形の他に団徳磨、築地若枝などが出演した全9巻の現代劇でした。時は明治の初め頃、昼は華族の殿様、夜はピストル片手に夜働きする怪盗青戸万作(?)を描いた痛快劇と言ったところでしょう。残念ながら映画は当たらず、興業的に見ても失敗したそうです。主題歌「怪盗小唄」はフランス文学に明るく、パリに滞在した事のある詩人西條八十の作詞。タイトルを知った際はモダンで洋風の洒落っ気ある曲かと思いきや、中山晋平のずんぐりした感じの陽気なメロディと合わさった、大変長閑な歌で驚きました。“夜は白浪、ピストル稼ぎ…”とは、時代劇歌謡のノリと云った感じで徳山璉も朗らかに決めています。此の頃の彼は後年程の砕けた歌唱ではなく、硬さが混じったバリトンが聴き物。レコードは昭和6年秋に発売されています😀。

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