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不思議な影 (青木晴子)。

青木晴子の歌う「不思議な影(シルエット)」。サトウハチロー作詞、紙恭輔作曲で、これは新映画社制作シネマ「昭和新撰組」の主題歌として書かれております。此の新映画社と作品は殆ど詳細な筋書や写真、フィルムが失われている為か全く中身はわかりません。辛うじて残っている資料では、この会社は日活を退社した村田實監督ら七人が、森岩雄の支援の元で昭和7年に興したそうで、其の第一回作品が「昭和新撰組」でした。伊藤大輔の原作・脚本、村田が監督を務めており、出演は小杉勇、佐久間妙子、島耕作など。全9巻であり、同年大晦日に封切られています。タイトルからして時代劇にも思えますが、主題歌は全然それっぽくないので、実際は現代劇だった可能性も。件の新映画社は殆ど振るわなかった為に、発足して半年後の昭和8年5月に新興キネマに吸収されました🎬。

さて此の「不思議な影」ですが、サビでは♬不思議なシルエット〜と歌っており、その響きは向こう半世紀先を読んでいる様な先進性に富んでいます。サトウのユニークな歌詞、作曲の紙恭輔は短調のルンバに仕上げておりますが、ルンバの旋律を大々的に用いた日本の流行歌では、恐らく最初の楽曲ではないかと思います。全三番構成であり、イントロはさながら殺陣のBGMの様。青木晴子は明瞭なアルトで歌い、伴奏はアコーディオン、トランペット、サックス、ピアノ、カスタネットなどが縦横無尽に響き、まるで1980年代のラブコメアニメのEDの様なビート感溢れる楽しい歌です。日本ポリドール創業時から歌ってきた彼女の最後期の一曲で、同時に出た「野の哀歌」を以て歌手を引退しました。A面はオリオン・コールの「進め!友よ」で、昭和8年初頭に発売されています😀。

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