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大東京行進曲 (松島詩子)。

松島詩子の歌う「大東京行進曲」。サトウ・ハチロー作詞、杉山長谷夫作曲で、彼女の駆け出し当時の一曲です。昭和7年10月1日、東京府東京市は五郡八十二町村の合併を行い、人口は五十三万を超えて世に言う『大東京』へとスタートを切りました。それ以外の世相を見ても、上野駅の新駅舎や東京市中央卸市場の落成や、東京府中競馬場や有楽町日劇の登場、またロサンゼルス五輪での日本選手のメダルラッシュなど景気の良い話が舞い込んでおりました。此の大合併に呼応する形で、各レコード会社から早速お祝いがてら東京をテーマにしたシティソングが生まれます。コロムビアからは「東京市民歌」「花の東京」「大東京小唄」。ビクターからは同名の「大東京行進曲」「ミス東京」が。キングからは「大東京の歌」が出るなど、まさに流行歌の世界は“東京づくし”だったのです🗼。

「大東京行進曲」はポリドールからのリリースで、此の年デビューしたばかりの松島詩子が同社に残した数少ない一曲です。サトウの歌詞は全五番からなり、日に日に伸び行く東京の街を情緒豊かに描いていました。タイトルに反して派手さのない大人しめなマイナーなメロディで、松島は清楚で伸びやかなアルトを聴かせております。伴奏はピアノ、バイオリン、シロホン、シンバル、クラリネットなど、しおらしいサウンド。作曲者の杉山長谷夫は「出船」「花嫁人形」「片しぶき」など、主に日本歌曲で活躍した人ですが、意外や大のユーモリストであり、時に“杉山はせを”と云う名前で思い切り弾けた流行歌やコミック・ソングも手掛けるなど、多彩な一面を見せた才人でした。裏面は新橋喜代三の歌う「わたしの東京」で、作曲は篠原正雄。レコードは昭和7年秋に発売されました😀。

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