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夕べ仄かに (松島詩子)。

松島詩子の歌う「夕べ仄かに」。島田芳文作詞、古賀政男作曲で、彼女のテイチク録音の中では代表的な一曲です。明治39年に山口県日積村(現柳井市)に生まれた彼女は、元々は地元で代用教員として働いておりました。昭和不況の最中にあって安定した職業に就いていた彼女でしたが、音楽への夢絶ち難く、20代半ばにして教職を辞して先ずは大阪に出ました。ここで松竹座のアトラクション等で初舞台を踏み、続いてレコード会社への売り込みを行います。昭和7年春に松竹レビュー主題歌「ラッキーセブンの唄」を歌ってデビューを飾りますが、メジャー録音は少なく、殆どの楽曲が二軍のヒコーキやリーガル、更にマイナーの太陽やアサヒ、ショーチク等からの発売でした。デビューして2年後、幸いにもキングとテイチク双方から歌う事になり、最初に円熟期を迎えるのです🎼。

「夕べ仄かに」はハバネラのメロディで書かれた、やや重い感じのタンゴになっております。「丘を越えて」の島田&古賀のコンビで書かれているのですが、それとは正反対の陰極まる難曲を松島詩子は芳醇な歌声でシミジミと歌い上げました。伴奏はアコーディオン、バイオリンの他に打楽器、弦楽器などで、赤々とした夕陽が寂しく山の端に沈んで行く様を思わせます。此の歌は楠木繁夫のレジャーソング「ハイキングの唄」の裏歌でして、陽気なA面に対して最初こそ評価はイマイチだったとか。それが発売して半年経った頃から、ジワジワと歌われる様になり、作曲者も嬉しい思いをしたと過去の資料にはありました。それに影響されたのか、松島盤の出た数ヶ月後にディック・ミネもカバーしています。こうして認められた彼女は、時の南口重太郎社長から千早淑子の名前を貰いました😀。

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