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小雨の丘 (小夜福子)。

すっかり雨の季節です。日本国中必ず何処かで雨が降っており、今日も傘が手放せません。と云う訳で雨に因んだ一曲、小夜福子の歌う「小雨の丘」を。サトウ・ハチロー作詞、服部良一作曲で、宝塚歌劇団で葦原邦子や春日野八千代と並んで人気を誇った男役、小夜福子の代表曲となりました。当時まだ彼女は現役のタカラジェンヌでしたが、吹き込みに至るまでの道は平坦ではありませんでした。宝塚は生え抜きを重視しており、当時から外部出演や吹き込みは原則行っておりません。この規則は楽団や音楽スタッフにも及び、彼女達のレコードは全て自前制作だったのです。そう云うルールの中で宝塚と云うブランドが続いて来た訳ですが、当然レコード会社の協力も必要なのは云うまでもありません。コロムビアは宝塚スターによる流行歌の企画を立て、宝塚側に打診したのでした🎼。

宝塚は大正の頃から、主題歌レコードをコロムビアで出して貰っていた関係もあり、快く承諾して話は進みました。伴奏はコロムビアと宝塚双方から選抜した楽士の混成チーム、其れを服部が纏めて録音が行われております。歌詞は詩人サトウ・ハチローによる亡き母への想いが込めれており、間奏での小夜の台詞にはグッと来るものがあります。一説では応召され戦火に斃れた恋人を「母」に置き換えているともされ、いずれにせよ大切な人を雨に打たれて偲ぶと云うテーマは人々の涙を誘うには十分でした。ブルースとシャンソンが混じった様な感傷的なこの歌は、数ある服部メロディの中でも不可欠なナンバーとなりました。レコードは写真入りのオリジナル盤の他、スダレ盤、また戦後は裏面を替えて市場に残ったので、大変息の長いヒット曲となったのです。昭和15年初夏の発売😀。

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