馬と女房 (徳山璉・四家文子)。
徳山璉と四家文子の歌う「馬と女房」。柳水巴作詞、橋本國彦作曲で、サブタイトルとして(競馬の唄)とあります。今も尚大きな人気を誇る競馬ですが、日本で最初に競馬が行われたのは幕末の1860年の事。それは横浜山手で開催され、明治時代に入る直前には根岸競馬場がオープンしました。20世紀に入ると大田区池上、さらに目黒にも競馬場が完成し、昭和に入るとラジオ中継も実施される様になります。公営ギャンブルとして、一攫千金を狙うファンらが馬券片手に賭けた馬を応援し、そして声も高らかに一喜一憂に咽ぶ光景は、今も相変わらずであると言えるでしょう。昭和初期にもっとも華やいだのが目黒競馬場でしたが、年々増加する客を収容しきれなくなった事もあって昭和8年にその歴史を終え、そのメッカは完成したばかりの府中競馬場に移されて今日に至るのです🐴。
「馬と女房」は、その目黒競馬場が在った頃に書かれたコミックソングです。作詞者の柳は西條八十の変名であり、競馬ファンの夫と半ば呆れ気味の奥さんのやり取りを面白く描きました。作曲が若手音楽家として期待されていたクラシック畑の橋本國彦と云うのもポイントで、彼こそ変名を用いる所を堂々と本名で登録しています。クイックテンポの陽気なメロディ、フィールドを競走馬が駆け抜けるようなサウンドをバックに、作曲者の長年の盟友である徳山・四家の両名が録音しました。特に徳山は此の頃からコミカルなリアクションを歌に入れ始めた事が窺えます。四家の少し気怠い歌唱にも、馬に夢中な亭主への諦めが現れていて、中々面白い出来となりました。伴奏はマリンバ、アコーディオン、フルート、シンバル等で、競馬場の熱気が大変良く描かれた一曲と言えるでしょう🎼。