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寂しき路 (徳山璉)。

徳山璉の歌う「寂しき路」。長田幹彦作詞、橋本國彦編曲、原曲はナルクシクレッド作曲の“lonesome road”で、ラベルにはユニバーサル映画「ショーボートの中の歌」とあります。此の映画は確かに存在しますが、1936年の制作と資料にはありましたので、それだと当レコードの制作時期より数年後と云う事になります。検索した限りでは1929年にも同名映画が同じユニバーサルの手で作られているので、恐らくは此方のバージョンでの挿入歌ではないかと推察されます。当時は「リオ・リタ」や「ビッグ・トレール」などの近世アメリカを舞台にした映画が数多く作られましたが、此れもその一つなのかも知れません。日本でも幾つかカバーされ、川畑文子や岡本八重子らが歌っておりますが、此の徳山璉のバージョンは日本では比較的早い時期の録音ではないかと思われます🎼。

「寂しき路」は曲名通りの物静かで人生の凋落を物語る様な寂しげなメロディで、橋本國彦がクラシカルなアレンジを施していました。バイオリン、ベース、ピアノ、鐘などが用いられており、当時の他のジャズソングとは違ったサロン風の格調高い伴奏でした。鐘の音色の後で風の様なバイオリンが響き、重厚ながらも美しいバリトンで歌に入ります。硬い感じの歌声ながら表現力は流石であり、悲哀のこもった徳山の歌声には、流れ流れる行く当てのない旅人の気持ちを描いていました。東京音楽学校卒で声楽家を目指していた徳山璉でしたが、デビューまもない頃から外国曲を多く歌い、此の他に「円タクの歌」「踊り踊れ」「サセ・東京」「あの子」などを残しております。これのA面こそが、田谷力三の名唱で知られる「巴里の屋根の下」で、レコードは昭和6年夏に発売されました😀。

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