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進軍の歌 (毛利幸尚他)。

毛利幸尚と合唱団の歌う「進軍の歌」。児玉花外作詞、陸軍戸山学校軍楽隊作曲で、これは松竹映画「進軍」の主題歌として書かれました。当映画はジェームズ・ボイドの海外小説が原作。粗筋は田舎に暮らす青年が飛行兵を志し、二年間の訓練期間を経て見事パイロットになる夢を叶えます。折しも戦争が起き、出征した青年は手柄を立てて凱旋。そして最後は国を出る時に一度は別れを告げた思い人と結ばれると言う流れでした。牛原虚彦監督がメガホンを取り、キャストは鈴木伝明、田中絹代などで、当時としては珍しい2時間に渡る長編。レコードはコロムビアからも出ていて、A面がキャストと弁士による映画シーンの台詞劇、裏が川崎豊歌唱の主題歌でした。またポリドールからも西村小楽天の語りで映画劇「進軍」が二枚四面でリリースされる等、本作のPRが大々的に行われました🎬。

「進軍の歌」は全五番構成で、ピョンコ節を基礎とする明治以来の伝統的な軍歌の作り。作曲者は伏せられておりますが、今福雄という軍楽隊員が書いたとも言われております。歌い易くて覚え易い点からしても、広く人々の口に咀嚼したいと云う思いもあったのでしょう。歌う毛利幸尚はシティソングやナンセンス小唄を度々入れましたが、軍歌を歌っているのはこれ一曲のみかと思われます。藤原義江を幾分ソフトにした歌声で、昭和8年頃まで歌っていました。歌詞は開戦→出征→閲兵→戦闘→勝利という流れで綴られており、軍歌というよりも運動会で流れて来る様な、明るく朗らかな応援歌の様なメロディ。まだ戦雲見えやらぬ平和な時代の一曲であると言えるでしょう。裏面には軍楽隊による行進曲「進軍」が組まれており、レコードは映画公開よりも早い昭和4年秋の発売です😀。


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