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ルンペン節 (徳山璉)。

徳山璉の歌う「ルンペン節」。柳水巴作詞、松平信博作曲による至極のコミックソングで、柳は西條八十の変名。内容上、大学の語学教授の要職に在った詩人は気恥ずかしさからなのか、落語家の様な名前で登録したのです。不景気からスタートした昭和初期の世相は、今とは比較のしようがない程に深刻なものでした。一家離散や娘の身売り、冷害や飢饉などで地方は惨憺たる有り様。就職難を描いた映画「大学は出たけれど」も此の頃の封切りですし、歌の世界にも「浮浪者行進曲」「朗らかなルンペン」「景気不景気スッポンポン」など世相を反映した楽曲が多く書かれて、また徳山自身も当時「歌うルンペン」と云う曲を吹き込んでいるのです。此の「ルンペン節」は帝キネ製作の喜劇映画「ルンペン熊公」の主題歌であり、原作は曾我廻家五郎。出演者は中野英二、曾我廻家蝶六など🎬。

主題歌はポルカのリズムを基にしており、妙な優雅さを含んだ行進曲調のメロディには「ボロを纏っていても、俺は何も怖かねえぞ!」と云う、何処か空いばりも交えた強烈なメッセージを感じます。作曲の松平信博は既に徳山とは「侍ニッポン」をヒットさせており、其の徳さんもリアクションを思い切り込めて豪快な笑いを響かせます。此処にアップしたのは今でもよく見かけるリバイバル盤の方でして、オリジナル盤から三年後の録音。大半の復刻アルバムも此のバージョンを収録しており、恐らく徳さんとしても会心の出来だったのでしょう。実演で此の曲を歌う際はステージに公園のセットを作り、徳さんはベンチの上で浮浪者姿で寝ていた所を、天井から舞い落ちる花弁で目が覚めて大きなクシャミをしてから歌って、観客に大ウケでした。レコードは昭和9年初夏の発売です😺。


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