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南地囃子 (大和屋濱勇他)。

大和屋濱勇の唄う「南地囃子」。阪口祐三郎作詞、杵屋和吉作曲の新小唄で、大阪の茶屋町である南地を唄っております。南地とは大阪市中央区にあり、宗右衛門町、九郎右衛門町、難波新地等から構成され、其のルーツは江戸時代まで遡ります。最盛期で千人を超える芸者が在籍したと言われ、明治4年には遊郭として正式に認可されました。特に此処で上演される「あしべ踊り」は名物と言ってもよく、出入りしていた芸者の数を考えるとその光景は極めて豪華絢爛なものだったと思われます。特に大和屋は南地最大の御茶屋であり、作詞者阪口祐三郎(1884〜1961)はそこの主人でした。彼は南地の発展に貢献した功労者で、自ら同地のPRソングを書いて全国に其の名を知らしめ、先述した「あしべ踊り」も彼が発案しています。唄う濱勇や三味線方も、大和屋の綺麗所でした⭐️。

メロディは陰旋法で、賑やかなお囃子と“アレヤサ!ヨイヨイ!”と云う掛け声が入ります。実に陽気な気分にさせてくれる煌びやかな編曲になっているのですが、面白いのは各コーラス毎の結び。それは♬おいで待つ夜をウエルカム、カムヒア、カムヒア、ウエルカム…と云う歌詞でして、ようこそを意味する英語“welcome”を『ウエルカム』と発音している辺りにも時代を感じますし、其の辺りの朴訥さは御愛嬌と言えるでしょう。なんとも往時の南地の繁栄振りが偲ばれる一曲ですが、残念ながら戦後は衰退の一途を辿り、件の大和屋も平成22年に廃業となりました。作曲者杵屋和吉は(五代目)は長唄三味線方で、本名は竹中金吾。先代の養子になり関西長唄界の大御所として活躍し昭和41年には受勲されています。裏は同じく大和屋の芸妓花一の唄う「ミス南地」が組まれました😀。

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