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新銀座行進曲 (天野喜久代)。

天野喜久代の「新銀座行進曲」。佐々紅華作詞作曲で、浅草のスターとして盛名を欲しいままにしていた天野が入れたシティソングです。彼女は本名を“新井ふく”と云いまして、明治31年に千葉県に生まれました。大正一桁の頃にヴィットリオ・ローシーに師事して浅草オペラで活躍し、洋楽系の歌手としては旧吹込みの時代からレコードを出すなど、時代の先端を行くスターでした。昭和に入るとジャズソングの歌い手として注目され、もっぱら鷲印=コロムビアレコードにて次々とリリース。「黒い瞳よ」「月光価千金」「愛の古巣」など、オサレでバタ臭いナンバーはもちろん、一方で「チャツカリしてるわネ」「意味深節」などのコミックソングも録音。そして川畑文子ら新世代のスターが登場すると、進んでバックアップに廻るなど、後輩らの面倒見の良い事でも有名でした🎙️。

さて此の「新銀座行進曲」は、もともと彼女の為に書かれたメロディではなく、大正後期に南地金龍と云う芸者が唄った新小唄「歓楽の夜」が原曲です。天野盤は曲名を日本一の繁華街の銀座に置き換え、全五番構成の歌詞を付けました。春の宵にクラシックカーに乗って踊りに行く二人、ホールで蝶の様に舞う紳士淑女達、楽しい語らい、そして別れ…。それは一つの御伽話の様な世界であり、シンプルながらも洒落っ気溢れた前間後奏がロマンチックなムードを添えております。伴奏は弦楽主体であり、歌の途中に入る何処かバラエティ番組のBGMの様な効果音も歌唱を盛り上げていました。前述した様に天野喜久代はコロムビア専属だった為か、ビクターではこれ一曲を残したのみ。また此の歌は再び新小唄「春の宵」と云う曲名で御目見えし、芸者歌手の山村豊子が録音しています😀。

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