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輝く黒髪 (千葉静子)。

千葉静子と日蓄女性合唱団の歌う「輝く黒髪」。西條八十作詞、古関裕而作曲で、戦況悪化著しい中で書かれた時局歌です。昭和18年4月に山本五十六長官が戦死し、続いて報じられたアッツ島玉砕、そして同盟国イタリアの降伏。南方の日本軍は徐々に敗退と戦力の消耗を重ねていき、完全に守勢へと回りました。深刻な人手不足に伴い、先ず大学生らの徴兵猶予が撤廃され、秋には神宮球場での学徒出陣壮行会が行われます。戦死者の激増により、埋め合わせの為に軍需工場や鉄道などで働く男性らも次々と応召されて行き、代わりに10代半ばくらいまでの少年少女から成る「学徒達」が、兵器生産の労働力として動員されるに及びました。そして日蓄と改称されたコロムビアでは、翌19年に学徒動員をテーマにした「あゝ紅の血は燃える」と「女子挺身隊の歌」を発表するに至ります🎼。

後者である「女子挺身隊の歌」は、新女苑と云う雑誌の企画を軍需省が後援するという形で生まれまして、二篇ある詩の一つ「輝く黒髪」は古関裕而が作曲しました。全四番構成で、一・四番は合唱、二・三番は千葉のソロとなっております。『日本のスーザ』と言われた古関らしく堂々たる胸弾む行進曲であり、不慣れな工場勤務へと向かう、モンペ姿の少女達を鼓舞しようと云う意図が伝わる出来です。彼の書いた数々の行進曲の中でも五指に入れたい歌ですが、時期が時期だった事もあり、全く流行る事はありませんでした。千葉静子は大正8年生まれで、昭和16年に東京音楽学校を出たアルト歌手。信時潔の傑作とされる「海道東征」にも歌唱者として参加するなど、将来を嘱望された声楽家ですが、この時期は「野菊に寄せて」を初めとして、女性向けの時局歌も幾つか入れました😀。

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