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紅蝙蝠の唄 (中村慶子・阿部徳次)。

中村慶子と阿部徳次の二人が歌う「紅蝙蝠の唄」。長谷川伸作詞、ポリドール文芸部作曲とあります。「瞼の母」「沓掛時次郎」など、時代劇作家として長年活躍した長谷川伸ですが、その彼が朝日新聞に連載した小説「紅蝙蝠」が日活太秦にて映画化された際の主題歌でした。本作は全八巻から成る無声映画で、監督は田中都留彦が務め、出演は光岡龍三郎、阪東巴左衛門、浅香新八郎、酒井米子など。昭和6年3月に前編、5月に後編が封切られました。詳しい内容は不明ですが、歌詞から察するに、主人公の戸並長八郎は太い眉毛にクリクリ眼と云う個性的な顔立ちの様で、二枚目の美男の剣士とは違った魅力と情熱を備えている様です。主題歌はコロムビアからも発売されており、A面には弁士による作品解説、B面に黒田進(楠木繁夫)の歌う主題歌がカップリングされていました💿。

ポリドール盤は中村・阿部両人が、全五番から成る歌詞を交互に歌っておりまして、一つの曲を両面に分けて吹き込んでいます。江戸時代の童唄の様な旋律をベースに、四拍子のハバネラのリズムが加味されています。コロムビア盤は一・二番のみの歌唱で、賑やかなジャズバンドの伴奏になっているなど、色々と対象的でした。作曲は文芸部名義となっておりますが、何処となく近藤政二郎のカラーを感じます。阿部はテノール、中村はメゾ・ソプラノで活躍し、両人とも昭和8年頃まで幾つかのレーベルで歌いました。伴奏は大村能章が指揮する東都和洋楽団が担当し、バイオリン、シロホン、フルート、三味線、太鼓、アルトサックスなどが用いられており、全体的に妖艶で淀んだ暗いサウンドとメロディ。レコードは映画の公開に合わせて、昭和6年3月新譜として発売されています😀。

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