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なつかしの蕃社 (霧島昇・菊池章子)。

霧島昇と菊池章子の歌う「なつかしの蕃社」。西條八十作詞、古賀政男作曲で、満映映画「サヨンの鐘」のサブ主題歌でした。これは昭和13年に台湾の山村で起きた、サヨンと云う村娘の悲劇に基づいた物語です。住民らに慕われていた巡査が出征する事になり、雨の中を村人らは荷物運びを手伝うのですが、サヨンもその一人でした。彼女は荷を背負っての道中、増水した川に足を滑らして哀れ落命してしまい、その事実が新聞に掲載されると早速「愛国美談」として広く伝わる様になります。現地には慰霊碑と鎮魂の鐘が設けられ、また記事に感動した歌手の渡邊はま子が歌謡化を進言。西條八十作詞、古賀政男作曲で「サヨンの鐘」と云う曲が生まれ、先ずは台湾向けに発売したところ好評を得ます。そして更に映画化も決定し、事故から5年後の昭和18年に公開されました🎬。

映画「サヨンの鐘」は清水宏監督で、人気絶頂の李香蘭が主演及び主題歌の「サヨンの歌」を担当し、その裏面が此の「なつかしの蕃社」でした。歌詞は応召されて村を出て行く巡査の目線で描かれ、1番を霧島、2番を菊池、3番で共唱と云う流れ。全体的にモノトーンな雰囲気なサウンドで、歌詞にある様に白い霧がこもっている山村の光景が浮かびます。菊池章子は当時はまだ19歳でしたが、ベテランの霧島を相手に巧みに歌っており、古賀の書くリズムをものにしている点は感心の他ありません。節回しが難しく裏歌だった為か、A面程に話題になる事もなく、また映画そのものも期待した程の興行成績は得られなかった様です。尚、歌に出て来る「蕃社」とは台湾の現地民高砂族、またはタイアル族の集落を指す当時の言葉で、過去に新民謡「蕃社小唄」も製作されています😺。

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