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日本の母 (松原操)。

今日は五月第二日曜日、即ち“母の日”です。と云う訳で母をテーマにした数ある歌の中から、松原操の歌う「日本の母」を。西條八十作詞、古関裕而作曲で、同名松竹映画の主題歌として書かれております。『映画新体制記念』として銘打って製作された本作は、原研吉監督で、出演は葛城文子、佐分利信、上原謙、水戸光子、佐野周二、高峰三枝子という豪華キャストで、主演の葛城は明治時代から活躍した息の長い女優でした。物語は早くに外交官の夫を亡くした母親が主人公です。細腕一つで五人の子供を育て上げ、やがて彼等は成長して仕事や結婚で母の元から旅立って行き、末娘も結婚も決まって母一人が家に残る事になります。先に嫁いだ長女の不和や行き違いを経て訪れた末娘の結婚式の日。一同に再会した子供等に囲まれて、母は過ぎた過去に想い馳せると云う物語でした💬。

「日本の母」は西條八十の歌詞が秀逸であり、スローテンポのメロディで書かれています。一番では我が子の為に身を粉にして生きる姿が歌われており、二番では旅立って行く子を見送る尊い姿が描かれます。三番は映画の内容に関係なく、息子が戦死しても尚瞳を輝かせて国に尽くそうと云う歌詞であり、此の辺りの事情は検閲を通す為の免罪符でもあったのでしょう。歌う松原操は霧島昇と結ばれて子宝に恵まれており、文字通り此の時は幼児を抱えた母でした。それ故に歌唱には母親の感情や慎ましさと力強さが現れており、戦中に於ける彼女の名唱の一つとなった事は間違いありません。五行三番から成る陰旋法のメロディですが、同類の曲と比較しても一層悲哀を感じるのは、矢張り戦争中の歌と云うのが大きいのかも。尚、葛城文子は昭和20年8月19日に亡くなっております😔。

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