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京極セレナーデ (関種子)。

関種子の歌う「京極セレナーデ」。畑喜代司作詞、井田一郎作曲で、京都市下京区にある京極町を歌っておりますが、これは新民謡ではなく通常の流行歌として製作されたと思われます。日本の古都にして、永遠の雅を醸し出す京都は見どころ満点、一か月居ても周り切れない程の寺院や名所が連ねて今に至ります。其の様な事情もあって、数々の京都ソングが存在しています。「祇園小唄」「京都の夜」「京都の恋」「おんな一人」と、枚挙にいとまがありません。この「京極セレナーデ」も其の一曲ですが、残念ながら忘れ去られてしまったナンバーと言えるでしょう。昭和一桁の頃、コロムビアは関西支社からも新譜を送り出しており、其の状況は昭和7年秋まで続いていました。そこには近藤政二郎、杉田良造、詩人の湊万波など、優秀な作家が揃っていたのが会社の強みだったのです🎼。

さて「京極セレナーデ」は、浪曲作家としても活躍した畑喜代司が作詞、アレンジャーとして有名な井田一郎自らが作曲しました。和洋折衷のハバネラのリズムが前奏に用いられ、歌に入る手前では“タタンタンタッタッタ…”と打楽器が鳴って、舞妓さんの下駄の音を思わせます。全四番構成で、関種子は癖のない落ち着いたソプラノで歌いますが、元々クラシック系の歌手ながら上手く乗り切っており、余裕ある仕上がりとなりました。伴奏にはギター、シロホン、フルートに加えてビブラホンが用いられており、京極に灯る街明かりを思わせます。井田一郎は昭和6年にポリドールからコロムビアに移籍し、ジャズソングは勿論の事、初期の古賀政男や古関裕而の楽曲の編曲を担当。自らも新曲を書くなど主力スタッフとして活躍するも、此の「京極セレナーデ」を最後に退社しました💬。

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