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もう一度言ってよ (東海林太郎・山路ふみ子)。

東海林太郎と山路ふみ子の歌う「もう一度言ってよ」。安東英夫作詞、山田栄一編曲で、人気上昇中の東海林と若手女優の山路がデュエットと云う、中々贅沢な一曲です。前にも述べた通り、遅咲きの新人スターの東海林太郎の人気は凄まじい限りであり、送り手であるポリドールレコードもただ売れそうな流行歌を提供するだけでなく、女優とコラボさせるなど新曲に工夫を凝らしていたのです。例えば田中絹代が台詞を入れた「雨の夜船」や、それに続く「すみだ川」「築地明石町」は好評を得ましたし、佐野周二の台詞の入る「上海の街角で」に「愛馬の歌」も忘れられない佳曲でした。山路ふみ子もまた、新進女優として期待されていた存在であり、10代で銀幕デビューを飾って帝キネや日活、新興などの映画に出演。またコロムビアから「悩み抱けば」と云う歌も吹き込みました🎼。

さて「もう一度言ってよ」ですが、陰旋法で書かれた二番構成のデュエットソングで、当時は珍しい掛け合い式になっています。ビブラホンとピアノによる潤む灯りの様なイントロですぐに一番に入り、先ずは山路が♬”愛してるって言ってよ〜“と、ねだる様な可愛い声で歌います。東海林も若々しい青年ごとき張りのある歌声であり、とてもアラフォーとは思えない瑞々しさ。間奏にはアルトサックスが何処かユーモラスなサウンドを聴かせますが、これは山田自身の書いた旋律でしょう。ラストはサビの空伴奏で締めています。作詞の安東英夫は松竹歌劇団の座付作家であり、有名な「タンゴ・ローザ」を始めとして多くのレビュー主題歌を書きました。それ故に若い女性視点での歌詞を得意したので、此の様なオサレな楽曲には最適な作詞者だったと言えるでしょう。昭和11年の発売です😀。

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