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叱られて (川路美子)。

川路美子の歌う「叱られて」。清水かつら作詞、弘田龍太郎作曲で、今もなお音楽の授業で習う日本の名歌です。詩人清水かつら(1898〜1951)の21歳の時の作品とされ、初出は大正8年4月発行の『少女号』と云う雑誌での掲載でした。此の歌詞には自身の幼少期の思い出が影響されているとされ、貧しい故に見知らぬ家の使用人として奉公に出された年端も行かない子供が、主に怒られて泣く泣くお使いに行く様を描いています。此の子供とは夭折した詩人の実弟がモデルと言われていて、早くに母親と別れた自身の姿も投影されているとか。歌の光景は埼玉県の外れにある新倉村の風景(現和光市)と言われていて、後年同市の駅前に歌碑が建立されました。作曲は弘田龍太郎で、同じく清水作詞の「靴が鳴る」「雀の学校」が有名であり、例の歌碑に一緒に刻まれております🎼。

此のバージョンを歌う川路美子ですが、彼女は渡邊光子の事です。落ち着いた明瞭な歌唱を得意とし、厚みのあるアルトが売りでした。彼女は他に和田春子、渡瀬春枝などの名前を駆使して凡ゆるレーベルに姿を見せており、また日東レコードでは更に笹川銀子と云う別名を用いる等、八面六臂の活躍をしております。二番構成で、伴奏は赤坂溜池に在った東京フロリダダンスホール専属のフランス人バンド「巴里ムーランルージュ楽団」が担当。イントロのアコーディオンは編曲も手掛けたモーリス・デュフォールで、そのローカル色溢れる素朴な音色が歌の世界を巧みに表現しております。バイオリンはパクナデル、ギターはガストーン・トーマスで、何処か黄金色の景色を想わせるサウンドをバックに、子守唄の様に安らかな歌声が冴えておりました。裏面も同じ顔触れの「濱千鳥」🎼。

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