見出し画像

暁の決死隊 (三門順子)。

今や忘れ去られた女性歌手の一人が三門順子。その彼女が歌う時局歌の一つが「暁の決死隊」で、日華事変真っ只中に書かれております。彼女は大正4年に栃木県に生まれ、幼少の頃より長唄に親しみまして、18歳の時にNHKのラジオ番組に出演してその美声を全国に知らしめました。折しもその頃は“ハァ小唄”に代表される芸者歌手ブームの真っ只中でして、日本調の流行歌の需要が高まっておりました。多くの芸者らがレコード会社と契約して続々と新曲を繰り出したのですが、彼女らは検番に所属している関係からか『花代』が発生し、従って地方公演での人件費が高額なものとなっていました。芸者以外で日本調流行歌を歌える女性歌手は会社側にとって有難い存在であり、若くて美貌の持ち主である三門順子は、昭和10年にキングと契約して「水兵節」でデビューを飾ります🎙️。

「暁の決死隊」はお馴染みの佐藤惣之助の作詞、そして一貫してキングで活躍した細川潤一が作曲を手掛けました。戦陣に風吹くような前奏から始まる「麦と兵隊」を思わせる、如何にも典型的な軍歌調のメロディを、三門は細い感じながら凛とした歌声でマイクに向かいました。間奏には頼山陽の漢詩(🎵鞭声粛々、夜河を渡る…)が入り、もちろん彼女が巧みに吟じております。此の後も三門は「忠義ざくら」と云う愛国歌謡を歌っており、此処でも長唄で鍛えた喉を聴かせていました。作曲者は大正2年に福岡県に生まれ、20代前半には音楽の道へ入りました。松島詩子の「マロニエの木陰」がヒットしてキングの主力作家となり、戦後も三橋美智也の「おんな船頭唄」などが売れています。裏面は樋口静雄の歌う「戦線花咲けど」で、レコードは昭和14年春に発売されました😀。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?