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江戸から明治につながれたバトン「幕末伝習隊TERAKOYA」(2019.8.17)前編

今回、「伝習隊のこと、よく知らないから知りたい」
という私の期待は、ある意味完全に裏切られた。

プレゼンターは、伝習隊そのものではなく
「明治の功績は徳川の遺産によってつくられた」という真実を、
伝習隊という名を借りて”幕末佐幕シリーズ”の集大成として
語りたかったのだ。

▪︎プロローグ 日本を本当に救った男
ペリー来航によって開国した日本。
日米和親条約の4年後に締結されたのが日米修好通商条約だ。

米国全権ハリスの「本格的に貿易しよう」という要求に対し
「貿易、望むところ。西洋の技術を取り入れ、日本を強くする」
と交渉にあたったのが、日本の全権を託された
岩瀬忠震(いわせただなり)だ。

「貿易するなら商売の中心地、京都と大坂だ!」と言うハリスに
岩瀬は「帝のお膝元で貿易をすれば内乱になる。
内乱になるくらいなら異国との戦争のほうがマシだ!」
と一歩も引かない交渉の末、横浜開港で決着する。

本来、この条約は不平等条約などではなく、
岩瀬によって対等な交渉が行われ、
岩瀬が渡米し、アメリカで正式な締結をする
という約束がなされたものだった。

だが、岩瀬は政争に巻き込まれ、志半ばで病で亡くなってしまう。

そんな事情を知らない薩長など西の雄藩は
帝の意志を幕府が無視したとして、京都でテロ行為を繰り返す。

外国は嫌いだが、テロはもっと嫌いな孝明天皇は、
京都守護職となった会津藩主 松平容保に都の治安を託す。

しかし、幕府側の活躍を快く思わない
”過激派公家”と”薩摩の巨魁”によって、
半ばハメられた形で幕府は「朝敵」となってしまう。

▪︎第一部 伝習隊誕生(の前夜)!
時代は少しさかのぼる。

老中 阿部正弘はペリー来航に危機感を覚え
幕府による武術学校を発足する。

講武所という、伝習隊の前身となる組織だ。

対象は旗本、御家人。
ところが、「身分のある武士なのに鉄砲なんて使いたくない!」
など自分勝手な者が続出したため、農民からも招集され、
歩兵隊が結成される。

そして、デビュー戦。
相手は過激なことで有名な水戸天狗党。
案の定、怖気づき、なんとか少しは戦うものの、
戦力とは言い難い結果だった。

日本には、もっとしっかりとした軍隊が必要だ・・・

そこに白羽の矢が立ったのが小栗忠順(おぐりただまさ)だ。

小栗は岩瀬の夢を引継ぎ渡米。
「日本を木の国から鉄の国へ変える!」と決意して帰国した。

「幕府の運命に限りがあるとも、日本の運命に限りはない」
という使命感を持って横須賀製鉄所を建設、
のちに日本海海戦で活躍する軍艦がここで製造される。

元帥海軍大将・東郷平八郎は
「小栗さんが横須賀製鉄所を造っておいてくれたことが、
どれほど役に立ったか知れません」と語っている。

さらに小栗はガス灯、郵便、電信、鉄道の設立を構想し、
「明治の近代化は小栗上野介の構想の模倣にすぎない」と言わしめた。

小栗は、日本で軍隊を育てるために、
フランスに直々に鍛えてもらうことを考案する。

▪︎第二部「大鳥圭介!」
プレゼンターが歴史の魅力に引き込まれたきっかけは
司馬遼太郎「燃えよ剣」だそうだ。
土方歳三がヒーローとして描かれた作品だ。

この中で
「平素、歳三に臆病者とののしられている」だの
「実のところ将才はない」だの、散々に言われているのが
今回の真の主役 大鳥圭介だ。

伝習隊の総督となった大鳥は、一方で
「大鳥の命に従う武士は、身体手足のごとく。
神出鬼没の駆引で、敵の寄せ手を悩ませた」
とも言われていた。

どちらが真実の大鳥の姿なのか?

大鳥は今の兵庫県の医者の子として生まれた。
学問が好きで、漢学、儒学を学んだのち、
俊英たちが集った大坂の適塾で蘭学、蘭方を学んだ。

さらに学問を深めようと江戸へ行くが、
能力の高さからいきなり塾長に抜擢されてしまう。

22歳、その優秀さを嗅ぎつけ、当時、江戸で一番と言われた
江川塾から兵法を教授してほしいと依頼される。

薩摩藩主・島津斉彬には
「見事な蘭学。我が藩士にも教えてやってくれ」と請われ、
のちの明治政府の重鎮となる藩士たちに教授する。

西洋兵学者への道を突き進む圭介。
医者にはなれないと父に詫びを入れる。

彼は、講義をするのに教科書がほしいと、
日本初の金属活字「大鳥活字」で印刷に成功し、
カメラまで作ってしまった。

プレゼンを通じてわたしが感じたのは、
彼には”何かを成し遂げたい”という欲を感じないということだ。
武士や政治家というより研究者タイプに思える。

そんな彼が、なぜ軍隊である伝習隊の総督となり、
戊辰戦争最終の地、函館まで戦い抜くことになったのか。

その答えと伏線回収は後編に続く・・・

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