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人文知(アカデミア)とビジネス

人文知研究所の設立について

今回、サイバーエージェント様とCOTEN様が「人文知研究所」を設立されたことに文系修士出身として、(勝手に)とても嬉しく思っています。(※1)サイバーエージェント様はこれまでもAIや経済学を活用して先進的な活動を行ってきましたが、今回新たに設立された「人文知研究所」は、まさにその先駆けとなるべき存在だと感じています。

※1 プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000023920.html

人文知がビジネスに浸透しにくい理由

しかしながら、人文知がビジネスの世界に浸透することが容易ではないという現実もあります。この問いに対して、私はいくつかの理由があると考えています。

1. 概念や内容の難解さ
まず第一に、人文知そのものが非常に難解であるという点です。哲学や文学、言語学といった分野は、抽象度が高く、理解し難い概念などがたくさん出てきます。実際に、私自身も認知言語学を専攻していましたが、理解に苦しむ概念が多々ありました。

2. 社会的インパクトの理解不足
次に、人文知がビジネスに与える社会的インパクトを理解することが難しいという点があります。特に、ビジネスにおける適用方法が一般的に理解されにくいと感じています。ビジネスは、比較的に短期間での成果を追求する世界であり、比較的に長期的に価値発揮する(かもしれない)人文知がどのようにビジネスや社会に役立つのかが分かりにくいのが現状なのではないかと感じています。

3. 費用対効果の不明確さ
さらに、費用対効果が不明確であることも大きな要因です。2番で触れたように、ビジネスの世界では、投資に対するリターンが明確であることが求められますが、人文知がもたらす価値は短期的には見えにくく、長期的な視点が必要となります。そのため、企業が人文知を取り入れる際には、その価値をどのように測定するかやそもそも取り入れる利点に対する客観的な説明や腹落ちがしにくいと思われます。

ビジネスとアカデミアの橋渡しの必要性

これらの理由の中で、特に注目すべきは、COTENの深井さんもPodcastで触れられていますが、ビジネスとアカデミアを橋渡しする人材の不足です。(※2)サイエンスコミュニケーターという言葉が少しずつ知られてきていると思いますが、理系の分野で語られることが多く、まだまだ文系の分野では一般的ではない所感を抱いています。両者の間に立ち、アカデミア(人文知)とビジネスの両方の文脈を理解し、架け橋に人材の育成も必要だと感じています。そうしないと後述している通り、人文知をビジネスの文脈で活かす人や組織体制が作れないと思っています。(そもそも採用の時点で、採用担当者が人文知の価値を理解していないと、組織に人文知の血を入れることさえできないかもしれません)

※2 コテンラジオ: https://open.spotify.com/episode/75elKBDfiKCFS2CBtGb2LI?si=0tFO7niFRJW0_OX60TIV0w

人文知の社会への価値提供の可能性

人文知が社会に価値を提供する可能性は大いにあると私は考えています。例えば、哲学や文学、文化人類学といった人文知を持つ人材をブランドマーケティングの高ポジションに配置することは、企業のブランド戦略に深みを与える可能性があります。企業がアメリカ進出する際に、アメリカ文学のPhDを持っている方が文化的背景から示唆出しをして、戦略に貢献できるかもしれません。ただし、これを実現するためには、日本のジョブ型雇用がまだ浸透していないという雇用制度や雇用慣習の影響もあると思っています。

理解の難しいことをやってみる

AIをはじめとしたテクノロジーの発展により、再現性が担保され、ある程度それなりのことが私含め多くの方々にとってできるようになっている(参入障壁が下がってきている)現代において、一般的に理解し難いことや未知の領域に挑戦することの方が、ある種価値があるのではないかと感じています。そのため、すぐ理解できることに張るだけではなく、理解し難いことにも積極的に投資や人材が流動するエコシステムができたら良いのではないかと感じています。(私もそのような動きができたらと思っています)

終わりに

サイバーエージェント様とCOTEN様が新たに発表した「人文知研究所」の設立が個人的に嬉しく、本記事を書いて見ました。この取り組みが、人文知とビジネスの交差点に新たな光を当て、社会に大きなインパクトを与えることを願っています。


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