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シリーズ最新作「バッドボーイズ RIDE OR DIE」、窮地のウィル・スミスを救うのはやはり…。




前書き


バッドボーイズシリーズ最新作にして4作目となる「バッドボーイズ RIDE OR DIE」が今週金曜日に公開された。
ハリウッド屈指の個性派監督であるマイケル・ベイのデビュー作として誕生したバッドボーイズは、95年から始まり今年で29年目の長期シリーズとなり、主演のウィル・スミスとマーティン・ローレンスにとってはもはやライフワークと言っても過言ではないだろう。
生みの親であるベイは2作目で監督を降板したが、その後もカメオ出演は継続しているため、恐らく製作側との関係は良好なはずだ。
そのベイに代わって3作目、そして今回の最新作の監督に就任したのがアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーの2人組である。ドラッグをキメてハイになった状態で撮影されたかのようなベイ作品を引き継ぐのは非常に大変だっただろうが、バッドボーイズの根幹を残しながらも新しい風を吹き込んだ手腕はきちんと評価されるべきだ。


絶頂からドン底へ落ちたウィル・スミス


さて、ここで少しバッドボーイズの話題から離れて、2022年に開催された第94回アカデミー賞授賞式の話をしよう。
そう、ウィル・スミスがコメディアンのクリス・ロックを殴打した、あの衝撃的な事件が起きた回である。
筆者はこの件に関してのっぴきならない感情を抱いているため、事件の詳細に関しては下記のリンクを参考にしてもらいたい。

あの瞬間、あの場にいた人間の感情を完璧に読み取ることなど不可能であり、物事の善悪を判断することもまた、誰の立場で考えるか次第でどうにでもなってしまうため今回は言及を避ける。
事実だけを粛々と述べるならば、ウィルはクリスを殴打し、その結果映画芸術科学アカデミーを退会し、またそれに伴って、映画芸術科学アカデミーが主催するイベント(授賞式含む)への10年間の出席停止処分を受けた。
ウィルは殴打の直後に念願だったアカデミー賞主演男優賞を受賞しスピーチに臨んだため、実際の時系列は見出しとは真逆のドン底からの絶頂ではあるのだが、下馬評でのウィルの評価は非常に高く、本人も間違いなく手応えを感じていたはずで、気分的には絶頂からドン底そのものだったことだろう。
ウィルはその後、授賞式以前にすでに撮影済みだった「自由への道」(Apple TV+オリジナル)の配信に無事漕ぎ着けるが、殴打事件の余波か或いはただの休養期間なのか、その理由は日本にいては知る由もないが、それ以降はしばらく映画の世界から遠ざかっている。


ウィル・スミスに手を差し伸べたチーム・バッドボーイズ


そんなウィルの映画復帰作品となったのが今回の「バッドボーイズ RIDE OR DIE」である。
撮影開始は2023年春のため、殴打事件からちょうど1年経った頃のことだ。
そのため、脚本の初稿は事件以前から存在した可能性はあるが、最終稿に関しては間違いなく事件の影響が色濃く出ている。


以下、物語の核心に触れています。未見の方は注意してください。



3作目「バッドボーイズ フォー・ライフ」で初登場したマイク(ウィル・スミス)の息子アルマンド。犯罪者の母に唆され悪の道に進むが、マイクの説得により刑に服すことを決心する。
そしてアルマンドは今回の「バッドボーイズ RIDE OR DIE」にも再び登場し、自身が犯した罪の重さと向き合うことになる。
罪を犯した人間は許されてはいけないのか?というテーマには明らかにウィルの殴打事件の影響が表れている。
さらに今回、マイクは唐突にパニック発作を発症しており、これは事件後のウィルの心境を投影したものであることは間違いない。何故なら本作で描かれているほとんどの描写は3作目の延長線上にあるが、パニック発作に関してはあまりにも唐突な描写だからである。
そして、ここからが最も重要な要素である。パニック発作に狼狽するマイクを見たマーカス(マーティン・ローレンス)が彼を平手打ちし、叱咤激励するのだ。
もちろんこれは、目の前で家族が殺されそうになっているのに何をやっているんだ!という展開において実に自然な流れではあるが、当然それ以上の意味合い、つまりマイクではなくウィルに向けた叱咤激励でもあり、それを30年近くに渡って共演してきたマーティン・ローレンスから受けることに大きな意味を持つのだ。
「お前がやったことは確かに良くないことだ。だがいつまでもクヨクヨしているんじゃない。しっかりと前を向け」、こうしたメッセージを物語においても、またメタ的な意味においても違和感なく提示したのは実に素晴らしいことだ。


まとめ


ウィルが今後どのようなキャリアを歩んでいくのかは誰にも分からない。映画内で禊を済ませるという半ば反則技とも言える行為には恐らく賛否もあるだろう。
それでもやはり、稀代のアクションスター、ウィル・スミスはスクリーンでこそ輝くのだ。
筆者としては未だにウィルの行為に対して複雑な感情を抱いているが、俳優としての彼の活躍に関しては心から応援していきたいと考えている。
さて、長々と重苦しい話を続けてきたが、今回の「バッドボーイズ RIDE OR DIE」はアクション描写も素晴らしく、前述のようにドラマ要素にも深みがあり、実に爽快な作品となっているため、是非ともスクリーンで鑑賞してもらいたい。


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