子猫

ちいさな子猫を右手に抱えていました。
それそはそれはちいさな子猫で、私の右の手のひらにすっぽりと収まるほどです。
子猫は生まれたばかりで、ミルクを飲みたいと言っておりましたので、私は右の手のひらに子猫を抱えてペットショップからおうちへと帰ろうとしました。
しかしどうでしょう。
家にミルクがないことを思いつきスーパーに行き、そういえば昨日シャンプーが無くなったのだと思い出してドラッグストアに行きました。
さて帰ろう帰ろうと思うと、子どもの頃の友達に出会ってしまって話をされ続けました。
いよいよ帰らなければと思いました。
悪くない。私は子猫のためにミルクを買っていたんだと思いながら後ろに残る後悔を振り払うように歩いていました。
私が地面を蹴るたびに一歩後悔は後ろへ行きます。
でも、後悔が生まれるのは外からではなく私自身の中からですので振り払っても振り払っても私の周りには巻き付いています。
なんとか家に帰ってミルクを与えなければと思って歩いていましたが、家に帰った頃には子猫は息をしていませんでした。
私の慟哭は私がいた世界を壊すほどの大きなものでした。

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