リターン トゥー フォーエバー(11)

over the hills and far away

トラックが大きく揺れる
傾斜も加わる、跳ねるほどに揺れる
右へ左へ前へ後ろへ揺れるその度に振り落とされないよう
荷台の縁を必死で掴む

その道行は舗装どころかただの山道だった
山を越える道なので勾配もあり、到底車が走るように整備しているとは
言い難いため驚くほど大きく揺れる
ただの鉄板の荷台に乗っているためクッションも無く
余計にそう感じるのかも知れない
日本ではあり得ない体験に少なからず僕は動揺した

落ちたらどうするのか?
そう考えるのは日本では乗客が落ちないような公共機関しか無いせいだろうか
落ちたく無ければしっかり掴んでおけという事か
落ちても死ななければまた乗れば良いという事か
嫌なら乗らずに歩けば良いという事か

自分の当たり前が誰かによってどれだけ手厚く守られていたかという事を
初めて理解した気がした
その一方で南国の山を越えていく道
しかも荷台の特等席から見る山の景色は間違いなく魅力的だった
「乗客」は数名、白人がほとんど
リラックスして談笑する雰囲気でも無いため特に会話はしなかった

やがて突然視界が開ける
周りを山に囲まれ、海に面した集落
山を背に、切り取ったように一部だけ平坦な決して広く無い中心地は
砂浜へと続いているが
周辺部から海は崖になっている
その砂浜へ続く正面にゲストハウスらしき建物が見え
崖の上には小屋のような建物が点在する

着いた…

日本を離れて2週間ほど。飛行機、電車、船、そしてトラック
僕は初めて来たその場所を見てなぜだか
帰って来た、ように感じた

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