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Mountaineers - Basic Alpine Climbing コース ‐ クレバス・レスキュー実習

先日、Basic Alpine Climbingコースのクレバス・レスキュー(Crevasse Rescue)実習に参加してきました。クレバスという言葉に馴染みのない方もいるかもしれませんが、簡単に言えば氷河にできる穴のことです。冬から春先にかけては雪に覆われて見えないことが多いですが、雪が溶け始める季節になると姿を現すものもあれば、まだ雪の下に隠れているものもあります。登山中に氷河を横断する際には、見えているクレバスは避けられますが、雪に覆われて見えないクレバスに落ちるリスクもあります。この実習は、クレバスに落ちた仲間を救助する訓練でした。

クレバス・レスキューには、大きく分けて3つの方法があります。その前に、一応情報として、氷河を横断する際には、3〜4人がロープで互いを繋いで移動するのが一般的です。熟練者は2人で行うこともありますが、5人以上で行うことは少ないです。

1)滑落した者を綱引きのように、引っ張りあげる。最も簡単で迅速な救助が可能ですが、滑落者とその装備の重量によっては十分な人数が必要です。

2)滑落者が自力で這い上がる。あらかじめ用意しておいた縄梯子のような道具を使います。ただし、滑落者が怪我をしている場合や、この方法に熟練していない場合は難しいです。

3) 超小型の滑車を使い、少人数でも救助できる方法です。この方法も事前の練習が必要です。

今回の実習では3番目を学びました(2番目の方法も一度だけ体験していますが、難しかったし、疲れた!)。システム自体は理解しやすいですが、実際にロープを使うとけっこう複雑で、氷河横断の際には2チーム(3人1組の計6人)で行動するのが最も安全だと感じました (つまり、綱引き作戦を使える)。

シナリオとしては、私(写真の下側にいて映っていません)が先頭で氷河を横断中にクレバスに滑落しました。うつ伏せになっている仲間は、チーム全体がクレバスに滑り落ちないよう、ピッケルを使って進行方向と反対側に倒れ込みました。そして、最後尾にいた仲間(写真中央の人物)が主に救助を担当しました。滑落の瞬間、彼も反対方向にうつ伏せになり、滑落を止めました。左手にいるのはインストラクター(試験官)です。
最後尾の仲間が、ロープをまとめながら2番手の下までやってきています。ここで、このうつ伏せとなっている仲間の代わりとなる、ビレイ(彼が立ち上がった後に再び滑落しないよう、ブレーキになるようなものを氷河に埋める)を取ったり、滑車をセットしたりします。
滑車や、バックアップ的ビレイ(ブレーキ)をセット中ですが、全ての準備が整うと、2番手の仲間も立ち上がって、救助に参加します。この方法は、最低でも2人が救助者になれることが前提となっています。もし、3人中2人が滑落した場合、あるいは(可能性的には小さいのですが、真ん中の仲間が滑落した場合など、この方法が使えないケースもあります)。

この実習はマウント・レーニア国立公園内で行われました。実際の氷河を使って行う予定でしたが、氷河にアクセスできる人数が制限されているため、抽選に外れてしまい、私たちの実習は雪上で行われました。この日は他のアウトドア・スクールが権利を得ていたようです。クレバスに入ってみたかったので残念でした。

最後に、大事なポイントを書き忘れいましたが、雪崩が起きやすい場所や時間を予測するのは困難なのですが、それに比べると、クレバスによる事故はかなり防ぎやすいと言われています。なぜなら、主なクレバスの位置は記録として地図に記されていたりするので、隠れているとしても、その場所を避けるルートが分かっているからです。勿論、本当に若干ながらもクレバスの位置が動いている可能性や、気候変動の関係で、今まで姿を隠していたクレバスが新たに現れる可能性はあります。

これでBasic Alpine Climbingコースの座学と実習が終了しました。長いようで、あっという間でした。

6月末、氷河のある山を登山する予定なので、今から楽しみです。

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