WAIS,WMS-R 心理検査6 記憶について 公認心理師試験過去問解説

WAIS-IV 知能検査

16〜90.11 60-90分
15の下位検査(基本検査10,補助検査5)
全検査IQ(FSIQ,Full Scale Intelligence Quotient)全般的な知的水準
言語理解指標VCI 類似,単語,理解,知識*
知覚推理指標PRI 積木模様,行列推理,パズル,バランス(16-69才)*,絵の完成*
ワーキングメモリー指標(WMI) 数唱,算数,語音整列(16-69才)*
処理速度指標PSI 記号探し,符号,絵の抹消(16-69才)*
*は補助検査

言語理解指標VCIが低い場合 [言語]
 口頭での指示や説明が理解しづらい
 言葉での説明や会話によるコミュニケーションに困難
 →メモや図解が助けに
知覚推理指標PRIが低い場合 [視覚]
 図や地図を理解することや、物事の見通しを立てることなどに困難
 →図や地図といった視覚的な説明ではなく言葉での説明や、
  活動の目的と工程を自分でリスト化したりすることが有効
ワーキングメモリの指標WMIが低い場合 [聴覚]
 対象に注意を向け続けることが難しい
 耳から入る聴覚情報の処理に困難
 会話や指示の内容を覚えたりすることへの難しさ
 →間を取ってメモ、録音をとりながら話を聞く
  文章の概要を図解化する、電子機器を用いて計算を行う
処理速度指標PSIが低い場合 [情報処理]
 視覚情報の素早い処理やその情報に基づいた作業を時間内に終わらせることに困難
 →作業時間の調整や、こまめな休憩、作業を区切ったり

ディスクレンバシー(差異)比較、強みと弱みの判定、他詳細な分析
カットオフ値は70以下、100が平均値

130以上:非常に高い:2.2%
120~129:高い:6.7%
110~119:平均の上:16.1%
90~109:平均:50%
80~89:平均の下:16.1%
70~79:境界線:6.7%
69以下:精神遅滞:2.2%

1 76で平均の下という概念が出題されているので、上記一覧についても要注意、用語として見てわかることが必要。100±10が平均で、±20までで平均の下と平均の上、±30までは 境界線 と 高い、±30以上で精神停滞と非常に高いがそれぞれ対応します

WMS-R ウエクスラー記憶検査

Wechsler Memory Scale-Revised
45~60分 16-74才
「一般的記憶」と「注意/集中力」の2つの主要な指標、「一般的記憶」を細分化した「言語性記憶」と「視覚性記憶」の指標。「遅延再生」指標も求めることができます。
次の13の下位検査
1情報と見当識, 2精神統制, 3図形の記憶,
4 論理的記憶I, 5 視覚性対連合I, 6 言語性対連合I, 7 視覚性再生I,
8数唱, 9視覚性記憶範囲,
10論理的記憶II,11視覚性対連合II,12言語性対連合II,13視覚性再生II

Korsakoff症候群
コルサコフ症候群は記憶障害が主症状。不可逆的な(もとに戻らない)神経障害を伴う認知症。正常な脳の活動保持に必要なビタミンB1の欠乏で発症リスクが高まる。
アルコール中毒からのビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症の続発症として発症するのが典型で、ウェルニッケ-コルサコフ症候群と呼る。エイズやがんなどと関連して発症することも。新たな記銘に問題が起こり、過去の記憶は覚えている。

潜在記憶と顕在記憶
潜在記憶と顕在記憶という分類は、「記憶にあるかどうかを意識されるか否か」という分け方です。エピソード記憶の障害は顕在記憶。


数唱
順唱が5桁以下、逆唱が3桁以下の場合は、意識障害などが疑われる。
順唱はMillerの「不思議な数字7±2」が重視されて5桁以上で正常と判断。
逆唱は武田(2011)より3桁以上で正常とし、それらを超えていれば聴覚的ワーキングメモリーの即時記憶と全般的注意は保たれていると判断。
順唱6桁、逆唱5桁なら平均よりやや上で注意力や集中力や問題なし。

RBMT リバーミード行動記憶検査
Rivermead Behavioural Memory Test
成人以降用、30分。B.Wilsonらによりオクスフォード大のリパミードリハビリテーションセンターで開発された。
記憶障害の程度を日常生活に近い状況を想定して検査。標準プロフィール点SPS24点中、9点以下で重症、16点以下で中程度記憶障害。スクリーニング点(SS、最高12点)

BADS遂行機能障害症候群の行動評価
Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome
主として成人、1時間ほどかかる。
遂行機能障害の評価 24点満点。カットオフは11/12 
遂行機能障害の質問票(本人用、家族、介護者用)と、
日常生活に即した6つの下位検査 各0-4点
1規則変換カード,2行為計画,3鍵探し,4時間判定,5動物園地図,6修正6要素


SDS うつ性自己評価尺度総 得点
Zungはうつ病のカットオフポイントを40点として、
40~47点:軽度 48~55点:中等度 56点~:重度 とした。
重度(40-軽度,50-重度でいい)

1 76 19 歳の女性 A。A は高校卒業後に事務職のパート勤務を始めた。 もともと言語表現は苦手で他者とのコミュニケーションに困難を抱えて いた。就職当初から、仕事も遅くミスも多かったことから頻繁に上司に 叱責され、常に緊張を強いられるようになった。疲れがたまり不眠が出 現し、会社を休みがちになった。家事はこなせており、将来は一人暮ら しをしたいと思っているという。WAIS-IIIを実施した結果、全検査 IQ 77、言語性 IQ 73、動作性 IQ 86。群指数は言語理解 82、知覚統合 70、 作動記憶 62、処理速度 72 であった。
この検査結果の解釈として、正しいものを1つ選べ。
1 視覚的な短期記憶が苦手である。
2 聴覚的な短期記憶が苦手である。
3 全検査 IQ は「平均の下」である。
4 下位検査項目の値がないため判断できない。

2 視覚的短期記憶は処理速度72で、個人内で苦手とは言えない。聴覚的短期記憶は動作記憶62が扱い苦手と言える。しかし、現在はWAIS-IVに移行しているので、この問題を過去問としてどれだけ学ぶ必要があるか。WISC-IVに準拠させる必要がある

1 137 26 歳の男性 A、会社員。Aは仕事上のストレスが原因で心理相談 室に来室した。子どもの頃から忘れ物が多く、頑固だと叱られることが 多かった。学業の問題は特になかった。友人はほとんどいなかったが、 独りの方が楽だと思っていた。就職した当初はシステムエンジニアとし て働いており、大きな問題はなかった。しかし、今年に入って営業部に 異動してからミスが増え、上司から叱責されることが多くなった。A は「皆がもう少しゆっくりやってくれたら」と職場への不満を口にするが、 「減給されるので仕事を休む気はない」と言う。
A に実施するテストバッテリーに含めるものとして、最も適切なものを1つ選べ。
1 BACS
2 MMSE
3 STAI
4 WAIS-III
5 田中ビネー知能検査V

4 心理検査2,4で既出。BACSは統合失調症,MMSEは認知症,STAIは不安,田中ビネーは基本は子供用
「子どもの頃から忘れ物が多く」でADHD傾向、「頑固」「皆がもう少しゆっくりやってくれたら」「休む気はない」からマイペースなASD傾向。成人の知的側面の偏りが把握できる検査が必要。
ちなみに、「学習の問題はなし」でSLDは除外、「友達はいない,一人が楽」でADHDの対人葛藤かASDの社会性障害、「システムエンジニアに問題なし」でAHDHは軽度・ASDの特性発揮、「営業部でミス増加」でADHDの社会不安・ASDの社会性障害と解釈できる。


1t61 34 歳の男性、会社員。1年前、バイク事故により頭部を打撲し意 識障害がみられたが、3日後に回復した。後遺症として身体的障害はみられなかった。受傷から9か月後に復職したが、仕事の能率が悪く、再度休職になった。現在の検査所見は、以下のとおりである。
順唱6桁、逆唱5桁、リバーミード行動記憶検査標準プロフィール点9点、WAIS-III:FIQ 82、VIQ 86、PIQ 78、遂行機能障害症候群の行 動評価BADS総プロフィール得点 20 点、SDS うつ性自己評価尺度総 得点 30点。
検査所見により示唆される主たる障害として、最も適切なものを1つ 選べ。
1 記憶障害
2 知能障害
3 注意障害
4 抑うつ障害
5 遂行機能障害

1 順唱6桁、逆唱5桁は平均よりやや上で注意力・集中力は問題なし。BADSのカットオフ値は24点満点の半分なので総プロフィール得点20点は問題なし。WAIS-III:FIQ 82、VIQ 86、PIQ78は、低いがカットオフ値を超えており、知能障害は否定される。遂行機能障害を計るBADS24点と抑うつを測るSDS30点はいずれも問題なし。しかし、リバーミード行動記憶検査標準プロフィール点9点はカットオフ値であり、記憶障害が疑われる。

1t90 次の各種心理検査について、最も適切なものを1つ選べ。
1 バウムテストは発達レベルの評価を目的として用いられる。
2 WAIS は5歳から 15 歳を対象とする個別式知能検査である。
3 新版 K 式発達検査は養育者への問診により簡便に実施できる。
4 ベンダー・ゲシュタルト検査では器質的な脳障害を把握できる。
5 MMPI はパーソナリティの全体像を把握するために有効である。

4 心理検査3で既出
不正解者は採点除外の問題。赤本では2,5は×、1,3が?とされている。MMPIは得られる情報が多くパーソナリティの全体像を把握できると言えなくはないが、基本的には臨床的側面の検査。
https://www.mhlw.go.jp/content/12205000/000475477.pdf

2 140 22 歳の女性 A。A は職場での人間関係における不適応感を訴えて 精神科を受診した。ときどき休みながらではあるが勤務は継続してい る。親と仲が悪いので2年前から単身生活をしているとのことである。 公認心理師が主治医から心理的アセスメントとして、YG 法、BDI-II、 WAIS-IVの実施を依頼された。YG 法では E 型を示し、BDI-IIの得点 は19点で希死念慮はない。WAIS-IVの全検査IQは98であったが、言 語理解指標と処理速度指標との間に大きな差があった。
公認心理師が引き続き行う対応として、最も適切なものを1つ選べ。
1 MMSE を実施する。
2 田中ビネー知能検査Vを追加する。
3 家族から情報を収集したいと A に伝える。
4 重篤なうつ状態であると主治医に伝える。
5 生育歴についての情報を A から聴き取る。

5 心理検査2,4で既出

1t9 記憶障害について、正しいものを1つ選べ。
1 WMS-R は記憶障害の性質を分析できる。
2 Korsakoff症候群は記憶の保持ができない。
3 獲得された過去の記憶が想起できないことを前向性健忘という。
4 想起障害は手がかりによって思い出すことができる場合を指す。
5 体験が想起できないエピソード記憶障害は潜在記憶の障害である。

1 2のコルサコフ症候群は、「記銘(覚える)」→「保持(覚えておく)」→「取り出す(思い出す)」のうち、保持でなく最初の「記銘」の障害が大きい。

2 139 74 歳の女性。単身生活で、就労はしていない。最近物忘れがひどいと総合病院の内科を受診した。内科医から公認心理師に心理的アセスメントの依頼があった。精神疾患の既往歴はなく、神経学的異常もみられない。以前から高血圧症を指摘されていたが、現在はコントロールされている。頭部CT検査で異常はなく、改訂長谷川式簡易知能評価スケールHDS-Rは21点であった。
この時点で公認心理師が行う心理検査として、最も適切なものを&つ 選べ。
1 CAPS
2 CPT
3 MMPI
4 WMS-R
5 Y-BOCS

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