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プペルと批評(2/2)

プペルと批評、パート2。
1は昨日の記事。

で、話したいのは、僕がプペル作品をどう評価したか(すべきか)ですよ。
僕は基本的には「目指したことが達成できたか」で評価すべきだと考えています。

簡単な話、A君が中間テストで「今回は450点を超えるぞ」と意気込んでいますと。
じゃあ、その結果の評価は、まずは5科目合計の点数を見るべきじゃない?みたいなことです。
そこでいきなり「社会の点数が落ちてる」みたいなこと言ったってさ…。「何言ってんの?」みたいな。
プペル作品のアンチコメントってそういう声が多い気がする。

***

で、目指していること、というのは、どの映画も同じ、というわけではないと思っています。

例えば、『Fukushima 50』であれば、いわゆる博物館的な「史実を正しく後世に残す」みたいなことも当然製作の狙いに入ってくるわけで。
その点で、内容が事実と全然違ったら、それは目的達成できてない"クオリティ低い"作品と評価されても仕方がないでしょう。
例え、高さ300mの津波がきました!とした方が「作品として面白くなるから」と言ったって、それは目指していることとは違うからNGなのです。

それに対して、プペルはファンタジーですから、お話に「事実」みたいなものはありません。
だから、地球で起こっていた事実と違うからアウト、みたいな評価にはならないと思うのです。
500mの津波を作って良いのです。

***

あと、映画界のための映画製作、とかもありますよね。
よく映画論とか、演技論とか、ミュージカル論みたいな話で説明をつけていく人が好みそうな映画の作り方。
「この作品はこういう構成で、それは19何十年代に発明された手法で…」みたいな。
「だから、今年になってこういう手法でやってみよう」的な。
所謂”ツウ”な人間がそんな感じで語ったりすることがあると思うんですが。

じゃあ、このツウを満足させることに走ると、
「今までヒーロー視点で悪役に勝つ作品が多いじゃん。だから、悪役視点でヒーローに負ける作品を作ろう」とか
「トーキーから音声が入ってきた。だから、逆に音声を使わずに見せよう」とか、
映画のための映画を作っていて、そこには、客の反応への視点が欠如していることがある。
だって、”そっちの方が面白いから”そうしたわけじゃないからね。

で、多分西野さんは「誰よりも多くの人を楽しませる」、みたいなことを目指していたんじゃないかなと。
その意味で、新たな撮影技法の開拓とか、見せ方の開拓とかも彼なりに考えたかもしれないけれど、全ては「より多くの人にとっておもろいか」の判断軸で色々ぶった斬ってきたんだと思います。
まさに「面白いが正義」の感じで。

***

例えるなら、とんねるずさんの戦い方というか。
「とんねるずはネタができない(つまらない)、だからクソだ」みたいな評論って、芸人という概念的な括りの中で出来る話であって。

その当時、とんねるずさんの人気はすごかったと伺ってます(僕は知らない)。
で、とんねるずさんとしては、エンタメなんて楽しませたもん勝ちで、そのリング上で負けたら負け、みたいに思ってたんじゃないかなと。

そのとき、関西の芸人が「こっちはフリ→ボケ→オチを丁寧に作っているんだ」みたいなこと言ったって、笑いの量がとんねるずさんより少なかったら何のために丁寧に作ってるの?みたいな話になるというか。
面白いやつが強いの価値観において、とんねるずがカメラ一台壊す方がウケたらそっちが正義なんですよね。残酷だけど。

そんなこんなで、プペル作品は「より多くの人を楽しませる」という狙いに対して、忠実というかスッキリしている感じがあって僕は面白いなと思うのです。

***

では、より多くの人を楽しませる、とはどういうことか。
当然、年齢や国籍の幅は超えてきます。
だから、Hでいやらしいシーンはないし、「ご飯のシーン」はない。
例えば、食卓のシーンで、この食器の感じ、ご飯の感じ、おかずの感じ、並べ方の感じから金銭事情や親の育て方が細かく読み取れるなら、それは日本人による日本人っぽい食事だからですね。
外国だったらそこまで伝わらない。

アニメで夏の風物詩的に瓶のラムネを映すことがあるけれど、あのあるあるを共有できている人も世界人口から見れば少ないでしょう。

「それを使った時点で、世界戦には参加できない」
みたいなのがきっと他にもあるんですよ。

より楽しませたもんが強いんだ、みたいな総合格闘技みたいな喧嘩で随分と強そうな作品だから、僕は面白いなと思うのです。

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