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世界の空港事情

帰りの便は、もう2時間も遅れていた。

セキュリティー・チェックのため。

いつもの理由で、いつものように詳しい説明は一切ない。

ベン・グリオン国際空港


空港に到着した時もそうだ。

突然、「こっちへ来い」と呼び止められ、荷物チェックをされた。

他国でよくある賄賂の要求などではなく、本当に隅から隅まで調べられる。


入国した時もそうだった。

テル・アビブ夜景

深夜に到着し、ロストバゲッジ(荷物の行方不明)していた。

疲れ切った100人近くの人々が行列を作り、それを係員に申告をしていた。

みんな慣れたもので、クレームを付けている人なんて誰一人いなかった。

荷物がどこへ行ったのかと聞いても、係員は神のみぞ知ると言った。

しかし、翌日にはホテルの部屋に確実に届けると、彼女は保証した。

誰がそんな言葉を信じるだろうか。

そんなことが起きるとは予想もせず、着替えを一つも持っていなかった。

翌日は、二日近く着た服と下着で仕事するはめになった。

仕事を終えてホテルに戻ると、部屋には当たり前のように荷物があった。


出発予定から2時間半後、ようやく帰国便の搭乗手続きが始まった。

機内

しかし乗れたはよいが、一向に離陸しない。

しばらくすると、英語のアナウンスが流れた。

「当局からの指示で、全ての荷物を下ろし、再検査いたします」

慣れた乗客たちも、さすが客室乗務員に文句を言い始めた。

「どうなってるんだ!」

「いつになったら出発するんだ!」

「いいかげんにしろ!」

騒ぐ乗客

すると、一人の乗務員が言った。

「私だって、理由なんて知らない。これが彼らのいつものやり方」

その一言で、乗客たち静まってしまった。

この国ではセキュリティーがいつだって最優先事項だ。


あきらめムードの中、静まったはずの乗客が、またざわつき始めた。

何事かと思っていたら、一人が叫んだ。

「おい、俺の荷物を投げるな!」

窓の外を見ると、係員がスーツケースをポンポン投げていた。

荷物を投げる係員

さすがにこれはない。

(爆発物でも入っていたらどうするんだろうか?)

一瞬、そう思った。

しかし、係員に全然やる気が見られない。

これは手荷物の無作為検査と同じ類のものなのだろう。

当局はいつでも乗客の荷物を調べられるという示威行為。


結局、4時間遅れで飛行機は離陸した。

テル・アビブ上空


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