しずかちゃんの入浴シーンで問題なのは、しずかちゃんが裸なことではない

皆さんに知ってもらいたいことがありまして、それは男性であれば誰でも映画などでのレイプなど女性が加害されるシーンに興味があったりするわけではないということです。私はこの歳になってもレイプシーンなどはどうやっても好きになることが出来ず、つまり見るに堪えない。人間は加齢とともに神経が鈍くなるもので、歳をとるごとに大抵のことは平気になっていくものですが、逆に言えば加齢とともに慣れていくということでもあります。

私も特に子どもの頃や若いうちはそういうシーンを見ただけで気分が悪くなったものですが、それは道徳的な意味からしてそういう感情を持つべきで、だからそうなる、かというとそうではなく、どちらかというと生理的な部分が大きいです。それはどのようなシーンかというと一例を挙げますとスターウォーズ作品の中でジャバ・ザ・ハットという悪役がレイアを捕え、ストリップショーに近い格好で鎖に繋いで侍らせるというシーンがあります。この映画を初めて見たのは小中の頃でしたが、この時分には善と悪を題材としてライトセーバーなる剣で悪と闘うという内容にワクワクしたものですが、件のシーンに差し掛かったところでそういったワクワクがドロドロとした負の感情になったものでした。役とはいえなぜそのように女性を扱う必要があるのか子ども心には分からず、仮に映画なのでそういうシーンがあっても仕方がないのか?と一旦は納得しても、吐き気を催すといいますか、人には目が回るという生理現象がありますが、それに近い軽いめまいと吐き気を覚えるという生理的拒否感を覚えたものです。この歳になれば大抵のことに慣れるものですが、子どもにはそのようなシーンでさえ少なからず悪い影響を及ぼしている可能性があるということに留意する必要があると思います。

そのようなシーンでは子どもは基本的に肌の露出が多いということに衝撃を受け、そして鎖に繋がれているということも日常の風景からかけ離れもので、それが目まいや吐き気といったものを引き起こすのだろうと自己診断します。要するにそのようなシーンは普段まず見ることがないという意味では私にとってはグロテスクに映り、子どもに見せるには不適切ではないかということ。それが例えば肌の露出が多いという点ではドラエモンにおけるしずかちゃんの入浴シーンもそうですが、そのようなシーンを見せる必要があるのかという意見はさておき、入浴時には裸でいることが自然なのであり、そういった衝撃を受けることはないわけです。時代劇にしても殿様に「初いのう」などと言われながら若い女性が帯をほどかれるといったシーンはあるものですが、それもそれでこれから男女の関係になることを前提としているなら裸になることは何も不自然なことではないわけで、それ自体に衝撃を受けることはありません。しかし悪役の悪役性を引き立たせるという目的があるのだとしても、ストリップショーに近い格好をさせるというのは我々の日常に照らして脈絡がないわけで、そこには女性に対する悪意が含まれ得るということが問題でしょう。つまりジャバ・ザ・ハットの悪役性を映画製作者に重ねることもできるわけです。

我々は悪友のように悪いことをし合う仲であっても、犯罪を犯して留置場に入れられ犯罪者同士で面識を持つような場合であっても、日本では特に性犯罪を犯した者は軽蔑されるように、悪い者同士の中にもするべきでないことの暗黙の了解を得てきた土壌があります。人間というものは若いうちは知らないこと、無知な部分があるもので、それによって失敗を犯しがちであり、男性からすると女性は肉体的に弱いということもありますが女性から好かれる器用さのない男性ほど浅薄にターゲットとしてしまいやすいところがある。つまり性犯罪は小悪党によってもっと頻繁に起こされていても不思議はないのだが、そういった暗黙の了解があることで抑止されている部分はかなり大きいものがあるという実感があります。私も若い時分に何も考えず浅薄に行動していればレイプまではいかなくとも同意なく体に触れたり抱き着いたり押し倒したりなどは十分にあり得たという自覚があります。しかし友人からの一言などで何が軽蔑されることなのかを知ることさえできれば容易に回避できることでもあるのです。

同じ犯罪者同士であってもそういった認識を共有し、やるべきでないことの最低限のコンセンサスを得ていくことは一種の知恵でもあります。それによる抑止効果は小さくないものがあるでしょうということ。映画の中とはいえ悪役がそのようにするところを見せるということは、そういった我々が培ってきたことに対して真正面からぶつかってくるもののように思えてならない。