虎ペジウムの湯|diary:2024-06-09

松樹凛先生!

うぉー出ました!決定版だ。びっくりするほどトラぺジウムの感想文は流行っていて毎日投稿されているけど、もうこれは読んで泣き叫びたくなってしまった。

たまらず書店に飛び込んでは「射手座の香る夏」を購入。粛々読み進めております。

ということで私もトラペジウムの感想書いちゃうもんね。

しくじりウム

私は3週間か前に見て、どうにも変なところでつまづいてしまって自分の中で消化できていなかった。その前に見たデッドデッドデーモンズデデデデストラクション、あれは劇中で過去回想に入ってスクリーンが4:3に変わる演出があって、過去編のくだりとあの、「あれ、いつからこの画面サイズだったっけ?」ってなる感覚はすごく良かったんだけど、弊害としてそれ以降映画館のスクリーンサイズと上映映画の撮影サイズのズレが、めちゃくちゃ気になるようになってしまった。トラペジウムを観たバルト9はシネマスコープのシアターで16:9のそれを演るものだから、左右の余りが気になって、観ている間ずっと、テレビアニメ企画がぽしゃって足掻いて劇場アニメにこぎつけたんだろうな〜とか思ってたんだね。OPがねじ込まれるのもそうだし、やたらカット、フェードアウトが多いあたりも総集編みみたいなものを感じたりしていた。

シネスコのアニメは劇場アニメでは全くメインストリームではなく、代表的なのはレビュスタと竜とそばかすくらいだよ、というのはその後友人との感想戦で知るのでした。この辺の開始5分の先入観がなければ…ちょっとは没入できただろうか。

ざっくり感想ム

劇場から出る時に、すごくつまらなかったけど観てよかった、と思った。視聴体験を、かなり意図的に外している。丁寧につまらない、抑揚がない。ポルノとしてのカタルシスを排除している。「アイドルもの」であるなら基本点数の取れる歌のシーンはいくらでも絢爛にドラマチックに見せたいものだろうが、よくぞあそこまで虚無に振り切った。おそらくこの作品がアイドルアニメの最後のカウンターカルチャーという気がする。最後といわないまでも、一旦時流として、区切りを迎え当分は出てこないのではなかろうか。あとはメインストリームの残滓にしがみつくゾンビーが、わずかに残るだけだ。

ラストシーンには特に嫌悪感、というより最後の最後までこれか、という諦観を覚えた。小さい個展会場に身内がゾロゾロ入ってる状況が個人的に嫌いっていうのもあるし(夜中閉場前っぽいしマナーはいいと思うけどね)、星空だけひたすら並べて最後に、知らん女の子の写真バーンって展示する神経、内輪ノリすぎんか。で、作品名がトラペジウムってキャプション写してタイトル回収「ト ラ ペ ジ ウ ム」
ホゲー。わかってやってるにしても薄ら寒い。すごいぞ。すごいものを観させられた。エンドロールまで、なんの捻りもなく劇中のこれまでのカットを小窓に出して、凡庸を装うし。

風水!クーロンズゲートウム

東西南北に、名前に四神…玄武とか白虎とかの要素が入った女の子(タイガーくるみちゃんとかね)を配して、かつそれをコーディネートした本人は自ら青龍になる。というのはPS1のゲーム、クーロンズゲートのストーリーを想起させる。

風水師の主人公が裏世界と融合しようとする九龍城を探索し、四神の見立て、人柱の資格を持つ人物を探し、見立ての儀式を完遂することで世界の破滅を防がんとする。途中タイムスリップした清朝で、この時代の風水師が青龍の人物に成り変わり、自らを見立てようとしたことで生まれた邪気が、現代の異変の発端であることを知る…というくだりがある。


原作の高山一実さんは4人の名前に四神を入れたことをインタビューで、何か4つセットのものを探して偶然見つけて…というが、この二つの作品に何やら共通のインスパイア元の古典の存在を感じられずにはいられない。こういうのを想像するとやたらとワクワクする性分だ。

東西南北の見立てはいつまで有効であったか

トラペジウムの進行は、ゆうちゃんが拙い計略でアイドルになる布石のタスクを、みんなにはそうと言わずに巻き込み、それは大抵スマートにはいかず、かつ何となく周りに察されていて、歪ながら達成されていったり、ずいぶん違う方向に飛んでったが、なんだか結果オーライでゆうの思惑に誘導し、前進していく。

東西南北、四神に見立てたことで作られた力場が働き、見えざる手に引き寄せられているような感覚でドライブする物語が、トラペジウムの最大の特徴であった。
そしてそれは、くるみちゃんの精神が壊れてしまったあたりで崩れたと思っていた。しかし、ラストに至るまでずっと一貫して作用していたのだ。

私はあのとき、くるみとゆうの殴り合いが見たかった。しかしそれは避けられた。

彼女らはその後、持ち寄った祝詞を唱えた。あらかじめ定められた未来に、見立てに敷かれたレールを進んだ。

あれが、人の光、か?光っている人、か?定められた型に引き寄せられただけの、お仕着せの4人が。あれが不等辺四角形の、星たちであろうか?

少なくとも星は、落ちなかった。私は星が落ちる様を見たかったのだ。

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