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REITと実物不動産~安定性と流動性の視点から

 最近、新しい不動産投資として、個人投資家でもネットで小額から現物不動産に投資できる会社が出てきましたね。空き家活用の面からも、個人投資家がネットで地方自治体とも協力する業者さんから現物不動産を購入・リフォームして、賃貸物件として収益を得る、という投資法をテレビで見ました。私は現物不動産を持ちたくない個人投資家ですが、企業はともかく、個人が投資するとき、さまざまな思い入れがあるわけで、批判する気持ちはまったくありません。ただ私はこう考えて投資をしている、ということをお話ししたいと思います。

リートはほんとうに不安定なの?
 リート投資と不動産現物から賃貸収入を得るのでは、どちらがいいか、という比較の議論をよく見ます。不動産会社のホームページを見ると、リートには(1)株式市場で簡単に売買できる、(2)不動産の管理はしなくてよい、(3)比較的安定して、高利回りの分配金が得られる、という長所があり、一方(1)投資口価格の変動が大きく、上場廃止など株式会社と同じリスクがある、(2)日本では特に地震などで壊滅的被害を受ける可能性がある、(3)キャピタルゲインはあまり期待できない、という欠点がある、と言われています。現物不動産を投資対象にする場合、地震など天災のリスクは同じですが、リートと比べて長短所が逆になる場合も多いようです。
 個人投資家目線から別の点を考えてみたいことがあります。日経マネー8月号「村井信尚が斬る~注目銘柄トップインタビュー」の記事で、クリアル代表取締役社長横田大造さんが、「不動産投資の民主化を推進」と題してインタビューに答えていらっしゃいます。その中で、「リートの価格は株のように大きく変動」するが、不動産クラウドファンディングは「価格が変動しないので、日々の損益を心配する必要がない」中略「3~5%の利回りで着実に資産を増やしたい人に向いています」と言っています。私の経験ではリートがまずそんなに不安定だったかなあ、と感じました。東証リート指数は不動産証券化協会のHP(https://j-reit.jp/market/02.html、)からお借りしたチャートが示している通り、TOPIXと合わせるように確かに変動しています。

株以上に、東北大震災やリーマンやショックなど大きな暴落にはリートも弱いです。しかし、コロナショック以降、オフィスなどで大きな構造的要因から立ち遅れが目立つものの、配当込みのチャートから見ると、一般的にリートの株価が下がると分配金利回りが上がるので、配当(分配金)が目的なら「リートは(比較的)安定している」と言えないか、ということです。次の表は、J-REIT.jpのホームページから借りたJリートの2018年からコロナショックを挟んで7月までのJリートのマーケット指標の表ですが、一番右の列にリート指数×予想分配金の値を書き込んでみました。つまり東証リート指数にぴたりと連動するETFがあったとして、その株価が指数に円をつけたものに等しく、予想利回りと同じ割合で配当金が出たと想像したものです。実際にそんなことはあり得ませんが。すると、仮想の受取額はほぼ一定で、リート指数(株価)の大きな騰落率は予想分配金利回りの上下により相殺されていますね。

このことは、私が保持している積水ハウスリートの投資口価格と利回りの推移グラフ(JAPAN-REITのポータルhttp://www.japan-reit.com/から)からも想像できます。経験から、株価が上がれば利回りが下がり、株価が下がっても利回りは高くなっていたと思います。もちろん、コロナショック時のホテルリートのように投資口も利回りも下がる、というケースは、今後似たような状況を想定しておく必要がありますね。

http://www.japan-reit.com/meigara/3309/

不動産投資に何を目指すか?
 不動産は、衣食住はもちろん、文化や地域の未来像など、あらゆる要素を含んでいるので、なにがよい、わるいとは言えません。ただ投資である以上、リスクに対してどのような姿勢を持つかはいつも考えています。私はいわゆる投資口価格の上げ下げには上に書いた理由からあまり関心を持ちません。東証リート指数は1000で始まり、今1800台後半ですから、キャピタルゲインは期待できませんね。私も分配金を再投資したり、銘柄を組み替えたりして、投資金額の倍以上にはなりましたが、3倍にはとても届きません。ただ損失も、地震や金融危機、コロナによる暴落時でさえ、自分が持っているリートの分配金はきちんと受け取った記憶がありますし、先の表からもリートは落ち込みから順調に(?)回復し、まだ発展途上にあると考えます。
 さらに個人投資家にとって重要な要素は「流動性」ではないでしょうか。クラウドファンディングによる不動産投資のサイトを見ても、あるいは空き家の再利用による賃貸住宅化の事例でも、個人投資家が自由に売却・換金はしにくいように見えます。いっぽうリートは安定した分配金をもらいつつ、株のようにいつでも売買できます。私は現物を持つための手続きに煩わされず、自由に現金化でき、ほかの投資対象に乗り換えられるというリートの流動性の特徴がもっとも気に入っています。ざっと見た限り、現物不動産への投資はクラウドファンディングでさえ、投資物件の流動性に難があるように見えるのですが、いかがでしょう。
 また現物不動産投資ならどんな優良物件であれ、購入のために絞り込む必要があり、分散が困難ですが、リートは法人の投資対象から判断していくつか持てば分散は容易です。以前「ガイアの夜明け」の空き家活用投資に書いた時にも触れたように、日本は1,000万軒に迫ろうかという空き家、九州を超える面積の所有者不明の土地があると聞きます。個人がそもそも家や土地を所有して、そのうちだれのものかわからなくなる、今の不確実な時代にその必要がどれほどあるのでしょうか。私はエネルギーや環境保護も含めた未来の街のビジョンが気に入ったものに投資して、安定した分配金を楽しみにしたいです。

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