恋愛短編 煙草と月時雨
街が斜陽に飲み込まれていく。ビルたちが紫色の影に溶けていき、やがて街の夜景の一要素となる。人口の明かりが夜を支配する様はどこかもう戻れない所まで来た空恐ろさを感じた。僕と君は大学の屋上からその風景をただ眺めていた。トレンチコート越しに人の温かさを感じる。君の手が僕の手にそっと、怖いものを触るように慎重に触れる。その手は少し震えていた。僕は君がこのあと何を望んでいるのか分かっていたから、その望みのままに触れてきた君の手の指に、僕の指を絡めた。彼女は嬉しそうに僕に微笑んで、「綺